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西遊記

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第八回 観世音菩薩それぞれの者と会うのことその五

 空を飛びつつ今度は天蓬元帥のところに向かいました、そこは福陵山という高い山でした。そこに入りますと。
「これは仏の気配か」
「今度は豚か」
 豚の顔に人の身体をした黒い服の男でした、二太子は山の中で彼を見ました。
「また変わった格好になっているな」
「そう言う貴殿は木吒二太子」
 豚の頭をした男は仰天して言いました。
「何とまた大物が来られたのだ」
「いや、もう一仏気を感じたであろう」 
 二太子は驚く豚の頭をしている元帥に告げました。
「お主程の者ならば」
「おっと、そうだった」
 元帥も言われて頷きます。
「そちらにおられるのは観音菩薩」
「はい、私です」
 菩薩も言われます。
「こちらにいます」
「またどうしてこちらに」
「運命のことは聞いています」
 元帥にも言うのでした。
「それに向かう為に必要な宝を持ってきました」
「おいらの為にですか」
「左様です」
 その通りだというのです。
「参上しました」
「いや、何でしょうか」
 元帥は菩薩の言葉を受けて言いました。
「菩薩程の方がおいらに」
「こちらです」
 優しく微笑んで、でした。
 元帥に一つの箱を出しました、そのうえで言うのでした。
「受け取って開いて下さい」
「そうしていいんですね」
「はい」
 まさにというのでした。
「どうぞです」
「それでは」
 菩薩に言われてでした。
 元帥はその箱を受け取り開けました、そうしてです。
 そこにある馬鍬を見てです、思わず言いました。
「これは懐かしい」
「貴方の武具ですね」
「はい、太上老君が造って下さり」
 そうしてというのです。
「万歳老直々に授けて下さいました」
「その鍬ですね」
「これさえあれば百人力です」
 元帥は大喜びで言いました。
「おいらも」
「捲簾大将の宝杖は西王母が造られ」
「そういえばあの者も」
「今は人界にいます」 
 この世界にというのです。
「貴方と同じく」
「その様ですね」
「その大将と同じく」
「おいらにもですか」
「その武具を授けます」
「これで運命に向かうんですね」
「そうしてくれますか」
 菩薩は大将に尋ねました。
「これより」
「勿論ですよ」
 元帥は一も二もなく答えました。 
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