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海水浴といっても

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第二章

 二人で夏の熱海のビーチに来た、そのうえで水着の若い女性をまじまじと見てだ。伊藤はにんまりとして言った。
「最高じゃ」
「水着姿の若い女の子達は」
「全く、わし等の頃の水着なぞ」
「今見ると何でもないですね」
「うむ、しかもな」
 伊藤はさらに言った。
「わし等も海に入ったが」
「海水浴で」
「泳いだり浸かったりはしてもな」
「今みたいに遊んだりしないですね」
「肢体を露わにしてな」
「そうですね」
「海水浴も変わった」
 伊藤はしみじみとして言った。
「わし等の頃とな」
「それはそうですね」
 松方も確かにと頷いた。
「変わりました」
「別ものと言っていい位にな」
「はい、しかし」
 それでもとだ、松方は話した。
「伊藤公の方がずっといいですね」
「うむ、活発でしかもな」
「スタイルのいい美人さんがあられもない姿になっているので」
「実にいい、だから毎年ここに来ておる」 
 伊藤は松方に話した。
「今の日本を視察がてらな」
「いや、むしろこちらが目的では」
「そうかもな」
 笑って否定しなかった。
「実際楽しんでおるしな」
「そうですよね」
「だがまことに皆大きくなってスタイルもよくなって」
 女の子だけでなく男の子達も見て言った。
「健康だ、文明が発達しただけでなくな」
「子孫が健康で何よりですね」
「うむ、しかしここにおるおなご達もやがて死ぬ」
「人は絶対に死にますから」
「そうなればな」
「声をかけますね」
「極楽に行ってもわしはわしじゃ、今も楽しんでおるが」
 そうであるがというのだ。
「これからもな」
「おなご達をですね」
「楽しむぞ、昭和のお姉ちゃん達の水着もよかったが」
「平成も令和もですね」
「皆待っておるぞ、さて今度は銚子に行くか」
 こう言って実際に松方と共に行ってそこでも水着姿の美女達を見て堪能しかつ今の日本と日本人によくなっていると笑顔で頷いた。彼が毎年そうしたことをしていることは多くの者は知らないという。


海水浴といっても   完


                  2025・6・23 
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