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果樹園のヤンキー

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第二章

「堀さんっていうからまさかって思ったが」
「おいおい、あんたかよ」
 堀も彼を見て言った。
「誰かって思ったら」
「勉強で来たけれどな」
「こんなところで会うなんてな」
 二人は向かい合って話した、そしてだった。
 堀の母は傍にあった農作業用の軽トラに乗って家の方に行き堀が残った、そして堀は岡本に林檎園の中を案内し林檎の説明もした。
 そしてだ、外で一服して一緒に農園で採って作った商品でもある林檎ジュースと林檎のお菓子を出して一緒に食べつつ言った。
「あれだよ、今もヤンキーだけれどな」
「仕事は真面目にしてるんだな」
「そうだよ、高校の時から言ってるだろ」
「あくまでファッションだな」
「こうした格好が好きでな」
 そうであってというのだ。
「悪いことはしてないんだよ」
「そうなんだな」
「ああ、そしてな」
 そうであってというのだ。
「こうしてな」
「俺の案内もしてくれたな」
「そうだよ、仕事だからな」
「真面目なんだな、しかしこうして見たらな」
 岡本はコップの中の林檎ジュースを飲みつつ言った。
「作業服姿似合ってるな」
「ヤンキーでもか」
「ああ、あれだな」
「あれって何だよ」
「真面目に働いているとな」
 そうであるならというのだ。
「絵になるな」
「ヤンキーでもか」
「姿勢が違うな」 
 ファッションはどうでもというのだ。
「だからだな」
「それでか」
「働いている心が出てな」
「姿勢が違うか」
「それで似合うな」
「それ言うとあんたも学ぼうっていう姿勢が出てな」
 自分と同じく高校時代から外見は変わっていない岡本に言った。
「似合ってるぜ」
「そうか」
「ファッションはどうでもな」
「心構えがあるとな」
「姿勢がしっかりしてな」
「似合うんだな」
「ああ、高校の時は注意したがな」
 柄が悪いと、とだ。岡本はお菓子を食べつつ述べた。
「何でもないな」
「要は気構えとそこから出る姿勢か」
「そうだな、そのことがわかった。あの時は悪かったな」
「いいさ、気にしてないし」
 堀は笑って返した。
「それよりこのジュースとお菓子どうだよ」
「美味い」
「それは何よりだ、遠慮せず食ってくれよ」
「ああ、お土産にも買わせてもらう」 
 岡本は外の木のテーブルに着いて向かい合って座っている堀に言った。そうして飲んで食べつつ農園のことをさらに聞いた。そして以後彼はファッションよりもその人の姿勢や気構えを見て語る様になったのだった。


果樹園のヤンキー   完


                   2025・6・23 
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