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果樹園のヤンキー

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第一章

                果樹園のヤンキー
 実にあからさま出会った。
 堀今日子は小柄ながら鋭い目に派手なメイク、赤く染めた長い髪の毛とヤンキーそのものだった。そして実際にそうであった。
 制服は着崩しアクセサリーも多い、高校の授業にはしっかり出ているがまさにそうだった。
「喧嘩とかカツアゲとかいじめしねからいいだろ」
「いや、柄悪過ぎて引くぞ」 
 クラスメイトの岡本次郎はこう返した、眼鏡をかけてすっきりした頬でやや色黒で黒髪を真ん中で分けている。背は一七二位で痩せている。濃紺のブレザーに同じ色のネクタイとグレーのズボンの白いブラウスという制服である。
「もうな」
「生活自体は真面目だよ」
「ファッションはそうでもか」
「だからいいだろ」
 堀は岡本に言った。
「しかもここ農業高校だろ」
「そうだがな」
「あたしも卒業したらな」
 高校をというのだ。
「家の仕事手伝うしな」
「就職か」
「そっちにな、ファッション位いいだろ」
「ヤンキーでもか」
「マガジン読んでこうなったんだよ」
「週刊か」
「月刊もヤングもな」
「講談社ヤンキーもの多いしな」
 岡本もこのことは知っている。
「それでか」
「ああ、兄貴が読んでいてな」
「お前も読んでか」
「そうだよ、そう言うあんた大学に進むんだよな」
「農業科にな」
「頑張れよ」
 高校三年の時にこんな話をした、そしてだった。
 掘は卒業と同時に就職し岡本は大学に進学した、そして岡本は大学の勉強の一環で地元の林檎園に来たが。
 農園の副社長という中年の太った女性から案内を受けてだ、その途中でつなぎの作業服姿の彼女に言われた。
「これから大事な仕事があるので」
「だからですか」
「娘に案内してもらいます」 
 こう言うのだった、林檎園の中で。
「丁度ここにいますので」
「ここにですか」
「はい、そうです」 
 林檎の木に囲まれた中で話した、今はまだ実も小さい。
「呼びますね、今日子お願いね」
「うん、ママ」
 すぐに返事が来た、そして。
 薄茶色のつなぎの作業服姿の堀が出て来た、それで言ってきた。
「朝に行ってた大学生の人ね」
「その人にうちの案内お願いね」
「わかったわ、どうもです」
 彼女は女性に応対しつつ来た。
「これから案内してもらいますね」
「ああ、ここだったか」
 岡本はその彼女を見て言った。 
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