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西遊記

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第七回 悟空如来様に封じられるのことその十一

「既に」
「それで逃げたり暴れぬ様にですな」
「左様です」
「それは当然ですな」
 悟空も納得しました。
「言うなら牢に入れられておるのですから」
「左様です」
「五百年、神界では五日の間」
「静かにしてもらいます」
「わかり申した」 
 悟空はそれならと応えました。
「その様に」
「はい、しかしです」
 ここで釈尊は悟空にこうも言われました。
「貴方は暴れん坊ですが素直ですね」
「そうですか」
「嘘は言いませんし潔くもあります」
「火の気のせいでしょうか」
 悟空は自分ではこう考えました。
「わしがそうなのは」
「火の気ですか」
「はい、わしはよく言っている様にです」
「火の気が強いですね」
「そのものと言っていい位に」
 そこまでだというのです、悟空はそのことを今も自覚していてそのうえで釈尊のお言葉に対して答えるのでした。
「強いので」
「それで、ですね」
「火は燃え上がりますが」
「暴れるですね」
「その反面あっさりと消えまする」
「水をかけますと」
「そうなります、またはっきりと見えますな」
 こうも言いました。
「目に」
「はっきりと」
「そうであるので」
「貴方は潔く嘘は言わないのですね」
「暴れん坊でもありますが」
 自分でも言います。
「そうなのかと」
「そうですか、ではやはりです」
「やはり?」
「貴方の運命はなるべくしてなるのですね」
「運命ですか」
「今申し上げることはしませんが」
 悟空に微笑んで言われました。
「貴方も面白くないでしょうし」
「事前に全てがわかっていますと」
「そうです、ですから」
 それでというのです。
「貴方の運命については」
「お話してくれませんか」
「お知りになりたいですか」
「いやいやとんでもない」
 悟空は言葉で断りました。
「わしもです」
「今はですね」
「これからどうなるか全部わかりますと」
 そうなると、というのです。
「やはりです」
「面白くないですね」
「はい」 
 そうだというのです。
「それでは」
「そうですね、貴方もそう言われますし」
「お話されないですね」
「運命を楽しまれて下さい」
 こう仰るのでした。 
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