西遊記
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第六回 悟空二郎真君と戦うのことその十一
「僕が言っていいえすか?」
「猿には犬だな」
「はい、そうですね」
「では頼む、そなたの力まで借りるとは思わなかったが」
「いえ、出番を待っていました」
犬は尻尾を振って言いました。
「僕にしましても」
「そうであったか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「行ってきますね」
「では頼む」
「それじゃあ」
真君に応えるとでした、犬は筋斗雲に飛び乗ろうとする悟空に飛び掛かりました、そしてその左の太腿にかぶりつきました。
すると悟空はもんどり打って倒れ込みそこにです。
鷹も来ました、そして彼の背中に飛び乗って言ってきました。
「観念したかな」
「おのれ、犬までおったか」
「僕達は真君様の切り札なんだよね」
犬も飛び乗って来て言ってきました、尻尾をふりふりと振っています。
「こうした時に働かせてもらうんだ」
「それで遂に出番となったが」
鷹がまた言ってきました。
「流石にこれで終わりかな」
「うむ、よくやってくれた」
主の真君も言います。
「これでこの者を捕られられる」
「ぬっ、これは」
真君が右手を顔の前にやって印を結ぶとです。
悟空は金縛りにあいました、そのうえで言いました。
「動けぬ、これまでの体力なら術を破れたが」
「もう無理だな」
「無念だ」
「無念も何もあるものか、どれだけ暴れたと思っておるのだ」
「大騒ぎになったな」
「わかっているのならだ」
真君はそれならとです、悟空に告げました。
「万歳老の裁きを受けるのだ」
「これより神界に連行されてか」
「裁きを受けるのは貴殿だけだ」
真君は悟空にこのことも告げました。
「他の者はお咎めなしだからな」
「安心してか」
「裁きを受けよ、よいな」
「ううむ、それならよいがな」
「うむ、では来るのだ」
こうしてです、真君は悟空を金縛りの術にかけたうえで神界の車に乗せてまずは天王達神界の軍を率いていた神々の前に連れてきました、悟空は車の上に後ろ手に縛られ胡坐をかいた様な姿勢で憮然としています。
「この通り捕まえました」
「遂にですな」
「そうなりますか」
「よくやって頂きました」
天王は真君に左膝をついて右手を拳にし左手を平にして胸の前で合わせてそのうえで言いました。
「これで、です」
「戦は終わりですね」
「完全に。では後はです」
「大聖は私が護送します」
「万歳老の御前に」
「そしてです」
そのうえでというのです。
「裁きを受けてもらいます」
「ええい、まだだ」
悟空はそれでもと言いました。
「わしは諦めてはおらんぞ」
「いや、諦めろ」
すぐにです、一太子が言ってきました。
「そなたはもう捕まったのだからな」
「首を切られても諦めるぞ」
「一度切られると思うが」
二太子も言います。
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