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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第55話 龍と蘭の旅立ち

山賊討伐を無事終え一週間掛けて戦闘の後始末をしました。

主に賊の死体の処理と私が荒らした土地の修復です。

村の入り口付近で死体が腐乱すると疫病の発生要因になります。

流石に死体を野ざらしにしては衛生上良くないと思い、死体を火葬にしました。

村人からは「賊を弔うのか」と、抗議を受けましたが、私は彼らに火葬を行う理由を説明しました。

説明は芳しくありませんでしたが、趙覇が仲立ちしてくれたことで彼らも納得してくれました。

山賊討伐から帰ってきて以降、趙覇は気さくになりました。

私達への刺々しい態度も露とも感じませんでした。





私は今日、趙覇に星と水蓮が私に士官することを伝えました。

「劉正礼様に仕えることが出来てあの子達も幸せだね。私ももう少し若ければ士官したんだけどね」

趙覇は星と水蓮の士官を喜んでいました。

「趙覇殿、心配ではないのかい?」

「そりゃ心配だよ。子供はいつか巣立つものさ。それに、劉正礼様の口から聞く前に星達に聞いていたから気持ちの整理はとっくにできているよ」

趙覇は軽く笑っていいました。

「そうか・・・・・・」

彼女の顔を見てなんと言えばいいのか迷いました。

「元気出しなってっ!劉正礼様が気にすることじゃないよ。星達から士官を申し出たそうじゃないか。逆に私が恐縮しているよ。本当にあんな子で良かったのかい。腕っ節はなかなかだけどちょっと捻くれているところがあるからね」

場の空気を盛り上げようとしたのか彼女は私の背中を叩いて励ましてくれました。

彼女に気を使わせてしまいました。

これじゃ駄目ですね。

もっとしっかりしないと・・・・・・。

「趙覇殿、星はきっと私の力になると思う。水蓮のことも私は心強く思っている」

私は彼女に私の気持ちを伝えました。

「その言葉を聞ければ安心さ。劉正礼様、娘と水蓮のことよろしく頼むね」

彼女は私に軽く頭を下げました。

「ここは『まかせてくれ』と、言うところだろうけど・・・・・・。このご時勢だ。私は軽々しく言えない。だが、これだけはいっておきたい。私は星達を同志として大切に扱うつもりだ」

「ふふふ、ここは嘘でも『まかせてくれ』というものだろ。でも、劉正礼様の気持ちは十分分かったよ」

彼女は笑いを堪えながらいいました。

そこまで笑わなくてもいいじゃないですか?

私は真剣に気持ちを伝えたのに・・・・・・。

「ごめん、ごめん。劉正礼様、星達と真名を交換したんだってね。私とも真名を交換してくれない。私の真名は(そら)だよ」

「私の真名は正宗だ」

星の母親とも真名を交換しました。





趙覇に星達のことを伝えた私は麗羽達、星達に旅の仕度をするよう指示を出しました。

懸念したのが星達の馬がないことです。

仕方ないので当面は真桜と沙和の馬にそれぞれ相乗りして貰うことにしました。

旅支度を終えた私達は村人総出の見送りを受けました。

「劉正礼様、この度のご恩は終世忘れませぬ。趙雲、夏侯蘭よ。劉正礼様、しっかりお仕えするのだぞ」

村長は私に深く頭を下げ礼を述べると、星と水蓮を見て言いました。

「村長、この趙雲、わざわざ言われずともしっかりやりますぞ」

「村長、頑張って正宗様のお役に立ってみせます」

「それならばよい」

村長と星達が話ていると、趙覇が近寄ってきました。

「二人とも頑張るんだよ。まあ、寂しくなったら村に帰ってきな」

「母上、そのときはよろしく頼みますぞ」

「趙覇さんもお元気で」

その後、水蓮の両親が私に挨拶をしてきました。

両親は至って普通の人でした。

趙覇ほどインパクトはありませんでした。

彼女が両親との別れの挨拶を終えると私達は村を起ちました。





私達が馬で旅路を進んで数刻後、私はあることを考えていました。

大したことはありません。

猪々子達と別行動をとった時、彼女から頼まれたことです。

彼女から土産を沢山お願いされていました。

そろそろ用意して置かないといけません。

司隷州、エン州で土産を買うとあまり珍しい物はないので猪々子が拗ねそうです。

冀州にいる内に何か見繕いましょう。

猪々子が喜ぶのは食べ物でしょうが、食べ物は日持ちが悪いので悩みものです。

「星、水蓮、ちょっといいかい。土産を買いたいと思っているんだが、日持ちが良くて美味しい食べ物を知らないか?」

私は星と水蓮に聞いてみました。

「ふふふ、主。それでしたら最高の品がございますぞ!」

星は思わせぶりな態度で言いました。

彼女の態度に嫌な予感がしました。

恋姫の趙雲といえばアレです。

「主、これですぞ!」

星は拳大の壷を懐から出しました。

「それはなんだ?」

私は想像できましたが敢えて聞きました。

「よくぞ聞いてくださいました。これぞ人類の英知が作り出した。至玉の一品。メンマです」

星は自身満々に胸を張り私にメンマの入った壷を差し出しました。

予想していましたが、流石にこれを猪々子の土産にはできません。

「星、すまないがメンマ以外で良いものはないだろうか?」

「な、な、なんですと・・・・・・。メンマでは土産にならないというのですか!主、酷い、酷すぎますぞ・・・・・・」

星は雷を受けた様な表情をしました。

「別に、メンマが悪いと言っているわけじゃない。知り合いは大食らいでこの壷のメンマじゃ足りない」

メンマの件で星の相手をするのは疲れそうだったので、いい加減に答えてしまいました。

これが藪蛇になるとは・・・・・・。

「ほほ――――――。主、ならばこの私にお任せください。この道中を5里ほどいったところに街がございます。その街に私行きつけのメンマ職人が店を商っておりますので、樽で買うことができますぞ。できれば、私の分も一樽買ってくださいませぬか?」

星が興奮気味に私に近づいてきました。

「嫌、樽は流石に無理だろ・・・・・・」

「荷車を買えば良いではありませぬか?馬はあるのですから問題ないでしょう」

星は一向に引く気配がありません。

今更、メンマなんて買えるわけないだろと言えない空気です。

・・・・・・。

「分かった・・・・・・。星、お前に任せる。しかし、星のメンマの代金は給金から引くから、そのつもりでな」

私は渋々星に全てを任せました。

「畏まりました。流石、わが主!」

星はホクホク顔で喜んでいたのとは対照的に麗羽と揚羽は私を見て溜息をついていました。
 
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