西遊記
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第六回 悟空二郎真君と戦うのことその八
「甘い」
「むっ、そうきたか」
何と真君は鷹に変身して雀の悟空を追ってきます、そのうえで言うのでした。
「鷹は雀より速いな」
「それで変身したか」
「そうだ、これではどうする」
「ここでより速い鳥に変身するのは芸がない」
こだわりを見せる悟空でした。
「しかも丁度真下は川、そうなれば」
「どうするつもりだ」
「こうなるのだ」
強く言ってでした。
悟空は雀から鮭に変身します、そうして川に入って泳いで逃げようとしますが。
「貴殿が鮭ならな」
「みさごか」
「そうだ、この通りだ」
真君は鷹からみさごになって川に入って悟空を追います、それで悟空は色々変身しますが真君もそうしてです。
延々と追いかけっこをします、ですが埒が明かず悟空は遂にでした。
「こうなっては奥の手だ」
「むっ、消えた」
「変身せずに消えたか」
「そうしたか」
真君の家臣である梅山の六兄弟は彼が姿を消したのを見て声をあげました、見れば実際に悟空は完全に消えていました。
「姿を消したか」
「そうして逃げるか」
「やはり知恵が回る」
「並の者ではないな」
「全くだ、しかも気配も消した」
真君も言います。
「一体何処に消えたのだ」
「我等も気配を探していますが」
「いませんな」
「実に見事に逃げました」
「ここは」
「こうなればだ」
真君はそれならと知恵を出しました。
それで急ぎ天王の下に戻って事情をお話して言いました。
「それで照妖鏡をお使いして欲しいのですが」
「あの誰の姿も映し出す」
「どんな姿に化けても消えても」
「あの鏡を用いてですか」
「大聖の居場所を探して欲しいのですが」
「そしてそちらに向かわれ」
「はい」
そうしてというのです。
「捕らえます」
「そうされますか」
「そうします、ですから鏡をお使い下さるでしょうか」
「ならばすぐに」
天王はそれならと頷いてでした。
すぐに鏡を出します、そして使いますと。
「山の麓の真君の廟にです」
「そちらにですか」
「真君に化けて入り」
「そこで隠れてですか」
「難を逃れんとしています」
「そうですか、では」
「今からそちらにですか」
「向かいます」
真君はそれならと言ってでした。
すぐにそちらに向かいました、すると悟空も察しました。
「もう気付いたか」
「天王が鏡を使って下さってな」
「ううむ、そうであるか」
「全く。何かと知恵が回るな。私に化けて私の廟に入るとは」
「男前に化けられて嬉しかったぞ」
悟空は本来の姿で出てきて答えました。
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