西遊記
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第六回 悟空二郎真君と戦うのことその六
「これより私が出陣し」
「そうしてですね」
「戦います」
「そうされますか」
「はい、そして」
そのうえでというのだ。
「降します」
「そうしてくれますか」
「これより」
こう言ってでした。
真君は陣の前に出ました、そうして言いました。
「斉天大聖いるか」
「おう、ここにいる」
悟空は真君に応え彼の前に出ました。
「二郎真君だな」
「如何にも」
「会ったことはないが話は聞いている」
悟空は真君と対して言いました。
「そして今はじめて会った」
「私もだ、随分と強い気を発しているな」
「自信はあるぞ」
「そうなのだな」
「そういう貴殿もな、随分と強い気を放っているな」
「私も腕には自信がある」
「いいのは顔だけではないか」
悟空は笑って彼のお顔のことも言いました。
「わしは色に興味はないがもてるな」
「ははは、顔のことを言うか」
「実際男前だからな」
「それは言わないでくれるか」
「恥ずかしいか」
「うむ、照れる」
どうもというのです。
「だから止めてくれるか」
「そう言うならな、それで本題だが」
「私がここに来た理由はわかるな」
「うむ、わしと勝負をしに来たな」
「如何にも」
真君はその通りだと答えました。
「そして捕らえて万歳老の御前に連れて行く」
「そのうえで万歳老の処罰を受ける」
「そうしてもらう、大人しく来る気はないな」
「ないから戦っているんだ」
これが悟空の返事でした。
「それはわしの性分ではない」
「ははは、まことに火の気の塊だな」
「それそのものと言っていいな」
「それなら仕方ない、だが私も万歳老に命じられているのだ」
神界の主の天帝にです。
「だからな」
「戦うか」
「うむ、それではな」
「望むところ、参る」
「こちらこそな」
二人はそれぞれの武器を出しました、悟空は如意棒を真君は宝剣を。それぞれ出していざ一騎打ちとなりました。
二人はそれぞれの術も用い闘います、その勝負たるやです。
「流石に強い」
「貴殿も」
二人は間を置いて構えたうえで言い合います。
「何百合と打ち合っているが」
「全く隙がない」
「しかも疲れを知らぬ」
「これでは埒が明かぬ」
「そしてこれは私の策でもあった」
ここで真君は笑ってこうも言いました。
「貴殿が私との戦に全力を注ぐとだ」
「むっ、しまった」
悟空は言われて眉を顰めさせました。
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