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八条学園騒動記

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第八百二話 軍人と和歌その十一

「そうであってね」
「総統は贅沢三昧」
「日本の皇室よりもね」
「贅沢に暮らしてるのね」
「連合ひいては日本よりずっと貧乏なのに」
 七美は敢えて下世話な言葉を出した。
「それでもよ、総統一人でね」
「それだけね」
「日本の皇室なんて」
 それこそというのだ。
「両陛下がそうであられて」
「他の皇室の方々も質素なのよね」
「連合でも四大国なのに」
 それだけ豊かだがというのだ。
「そんなものよ」
「それで花鳥風月に親しむ」
「そうなのに」
 それがというのだ。
「あっちはね」
「贅沢で」
「貴族になると」
「そんなものね」
「艦隊司令はオーケストラなのも」 
 食事の時にというのだ。
「当然だとね」
「なるのね」
「そうなのよ」
 これがというのだ。
「あちらではね」
「贅沢で人をこき使う」
「偽物の雅よね」
「それならね、昔の軍人さんみたいに」
 彰子はまた山縣有朋達二十世紀前半までの日本軍の軍人達を思い出した、それも陸軍海軍問わずだ。
「普通に詠む方がね」
「本物の雅よね」
「武人であっても文を忘れない」
「まさに文武両道で」
「そこに雅もあるなんて」
 自分達が言う本物のというのだ。
「恰好いいわね」
「そうよね、それで日本軍の軍服はね」
「当時の日本軍を再現しているのよね」
「あの黒と金の詰襟の」
 冬の軍服である、夏は他の連合の軍隊と同じく白と金の詰襟となる。
「最高に恰好いい軍服ね」
「あれもその頃の日本軍の軍服よ」
「帝国海軍よね」
「陸戦隊に支給される軍服も」 
 日本軍にはそうした軍服も存在しているのだ。
「あるけれどあっちは陸軍よ」
「帝国陸軍ね」
「日露戦争の時のね」
 二十世紀初頭である。
「その頃の軍服よ」
「それをまた着ているのね」
「もう誰もが和歌を詠わないけれど」
 この時代の日本軍はというのだ。
「軍服はね」
「そのまま残ってるのね」
「そうなのよ」
「そう思うと何か自然と心が温かくなるわね」
「ええ、そうよね」
「もう和歌は詠わなくても」
 それでもというのだ。
「ちゃんとね」
「その時の軍服を着ていて」
「それって当時の心があるってことだし」
「自然とね」
 まさにというのだ。
「そう思えるわね」
「今もあの時の軍人さんの心が残ってるって」
「私達の軍隊にね」
 日本軍にとだ、二人はエウロパについては徹底的に悪く思いこき下ろしたうえで自分達の軍隊にはそう思うのだった、そしてまた和歌を詠うのだった。


軍人と和歌   完


                   2025・3・2 
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