西遊記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五回 悟空蟠桃園暴れるのことその一
第五回 悟空蟠桃園暴れるのこと
斉天大聖に任じられ神界に戻った孫悟空、位は高いですが禄はなく仕事はありません。それでなのでした。
「こうしてだな」
「我等と飲んでだな」
「時間を潰しておるな」
「そうだ」
神界で知り合った神仙や神将達と共に飲んで食べつつ言いました。
「書も読み武芸の鍛錬もするが」
「しかしだな」
「仕事はなくてだな」
「そうしておるな」
「神界のあちこちを旅もしてな」
そうしたこともしてというのです。
「仏界にも行った、それで仕事がないとな」
「別にいいか」
「それならそれで」
「構わぬか」
「好きなだけ飲めて寝られるしな」
このこともあってというのだ。
「問題ない」
「そうか、それでだな」
「今も飲んでおるな」
「そして食っておるな」
「わしは花果山に宝がありな」
富はありというのです。
「そして仕事がないならな」
「遊ぶだけだな」
「この様に」
「好きなことをして」
「そうだ、いい暮らしだ」
笑って言います。
「遊ぶだけでいいのだからな」
「ははは、確かにな」
「それで暮らせるならいいな」
「それではな」
「実にな」
こう言ってでした、悟空は。
今食べている豆腐を見てです、こんなことを言いました。
「この豆腐もよいな」
「我等は神仙だったり神将だったりしてな」
「殺生は出来ぬからな」
「肉や魚は供えたり贈られたものでないと口に出来ぬ」
「それがないと精進ものとなるが」
「それで今貰ったものがなくてな」
そうであってというのです。
「豆腐を食しておるが」
「この豆腐は美味い」
「酒にも合う」
「実にいいな」
「全くだ、だからな」
そうであるからだというのです。
「酒が進むな」
「全くだ」
「では今は飲もう」
「心ゆくまでな」
こうお話してです。
悟空は斉天大聖府、神界に築かれた赤い宮殿の中で友人となった者達と共に飲んでいました。その他にもです。
色々遊んで楽しく暮らしていました、ですが。
それを見た神将の中にはです、ひそひそとこう話す人達がいました。
「斉天大聖は今は遊んでいるが」
「やがて遊ぶに飽きぬか」
「遊んでばかりだとそうなる」
「どんなこともそればかりだとな」
「そして遊びに飽きれば」
その時はというのです。
「暴れぬか」
「あの者は火の気があまりにも強い」
「火の気そのものと言っていい」
「火の気が強過ぎると騒がしくなる」
「暴れることも多い」
「あの力で暴れられるとな」
「神界でもことだ」
こうお話してでした。
天帝にも言うのでした、それを受けてです。
帝はどうかというお顔になってです、火星に言いました。
ページ上へ戻る