昔の体形
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第六章
「全身の筋肉凄いことになりますね」
「腕も肩も足腰もな」
「腹筋も背筋も」
「だからあの人当時でも小柄でもだ」
それでもというのだ。
「全身の筋肉はな」
「凄かったんですね」
「そうだったんだ」
「そうですよね」
「兎に角強くてな」
知識や交渉術で知られる人物だがというのだ。
「筋肉質だったんだ」
「そうでしたか」
「今でもかなり強いな」
「全身鍛えられていて」
「あと仁王像もな」
岸川はこちらの話もした。
「奈良の大仏殿とかにあるな」
「あの怖い顔の」
「筋肉凄いな」
「ヘラクレスみたいですね」
「あれのモデルはな」
それはというのだ。
「鎌倉時代の作品だからな」
「あの時代の人ですね」
「鎌倉武士だったんだよ」
彼等だったというのだ。
「実は」
「鎌倉武士が、ですか」
「そう、仁王像のモデルだったんだよ」
「物凄い筋肉ですが」
「いつも馬に乗って弓矢使って刀振るってね」
「戦って鍛錬もして」
「相撲もしていたしね」
そうだったからだというのだ。
「あんな体型だったんだよ」
「凄いですね」
「わし等より小柄でもな」
それでもというのだ。
「そうだったんだよ」
「小柄で胴長短足でもですね」
「わし等から見てな」
「あんなヘラクレスみたいな筋肉でしたか」
「勝海舟さんもな」
彼にしてもというのだ。
「そうだったんだよ」
「それは凄いですね」
「全くだな」
「何かこうしたお話してますと」
万永は達観した様になって話した。
「僕の背なんて」
「何でもないな」
「ですね、もう」
「そうだな、一七〇あったなら」
それなたというのだ。
「文句なしですね」
「それ位でそれなりに足が長いとな」
「それにもっと言えば低くて足が短くても」
「どうでもいいな」
「ですね」
昔の人達の体格の話をしてだった、彼は実際にもうそれはどうでもよくなった。そして以後自分の背のことを言うことはなくなった。
昔の体形 完
2025・5・29
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