冬の中の郷
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第二章
「楽だな」
「ええ、毎日でも入られるわ」
「有り難いことだ、じゃあ茂一も忠二も入ったらな」
風呂にというのだ。
「飯にして」
「私達も入りましょう」
「風呂にな、それで布団敷いてな」
「寝ましょう、今日も電気毛布入れる?」
「寒いからな、入れるか」
「それじゃあね」
そんな話をしながら内職をしていってだった、子供達小学四年と三年の父親そっくりの二人が家に帰るとだった。
実際にあちこち濡れていた、冷えているのは明らかだ。それで元春は息子達に父として告げた。
「風呂入れ」
「うん、そうしてくるね」
「今からね」
「それであったまってな」
そうしてというのだ。
「身体も奇麗にしろよ」
「服は洗濯機に入れるのよ」
母も言ってきた。
「いいわね」
「そうするね」
「ちゃんとね」
「オーバーや手袋は干してね」
よく乾く様にだ。
「それでよ」
「服も着替えるんだよね」
「下着も」
「そうしなさい、身体奇麗にしてきなさい」
「あったまれよ」
母だけでなく父も言った、そうしてだった。
息子達は風呂に入った、父はその二人を見てから女房に言った。
「子供は元気だな」
「寒くても毎日外に出て遊ぶわね」
「雪でな、もう雪はな」
これ自体がというのだ。
「最高の遊び道具だな」
「子供にとってはね」
「俺が子供の頃もそうだったな」
元春は芳江に話した。
「寒くてもな」
「気にしないで」
「毎日孝ちゃんや本君と遊んでたな」
「酒屋さんとお米屋さんと」
「ああ、そうしてたな」
「私もそうだったわね」
芳江も笑って言った。
「皆とかまくら作ったし」
「この季節はな」
「そうして遊んでいたわね」
「皆な、風の子っていうけれどな」
子供はというのだ。
「けれどな」
「実は雪の子よね」
「ああ」
そうだというのだ。
「そうだよな」
「そうね、私達もそうで」
「あの子達もな」
「同じね、子供は代が代わっても」
「雪の子だよ」
「ここじゃね」
「そうだよ、ずっと同じだよ」
笑顔で言った、そして芳江は晩ご飯の準備に入り元春は内職を続けた。
昭和の頃元春はそうした日々だった、だが令和になり。
新築された家の中でずっとスマートフォンで遊ぶ孫を見てだ、すっかり年老いた姿で同じく年老いている芳江に言った。
「ずっと雪の子じゃなかったな」
「そうね、今は雪も少なくなって」
「農家はやっていてもな」
「農具も変わったし」
「ハウス栽培もやってな」
「皆スマホ使ってお家の中にいて」
「何かと変わったな」
こう言うのだった。
「本当に」
「そうね、変わるものね」
「世の中はな、思えば昔はテレビもストーブもなかったしな」
「ええ、近所にモールが出来て」
「そこで皆売り買いして働いてるしな」
今ではというのだ。
「孝ちゃんや本君のお孫さん達もな」
「今はそうね」
「農具はそうした店で買う」
「大きな会社が作ったものを」
「変わるな、世の中は」
「何処もね」
二人で話す、そしてだった。
二人もスマートフォンを手にした、そこで番組を観て頼んだ。暖房が利いたリビングの間でそうしたのだった。
冬の中の郷 完
2025・1・11
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