蝶々の夜
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第二章
温室の中は花々が咲き誇りまるで温帯の春の様だ、見れば植物も花も温帯それも温暖湿潤気候のものばかりだ。
その温室の中に入るとだ。クリンソンは。
複数のケースの前に来た、そうして言った。
「ではな」
「これからですか」
「夜に舞う蝶達を見せよう」
笑顔で言ってだった。
全てのケースを開けた、すると。
そこから様々な種類の無数の蝶達が出てだ、そのうえで。
彼等を飛び立たせた、クリンソンは言った。花と蝶達の中で。
「これでだ」
「夜に舞う蝶達ですね」
「それが実現されたな」
「温室ならですね」
マスダもその花と蝶達の中で言った。
「こうして」
「そうだ、光と気温がな」
その二つがというのだ。
「揃う、それならだ」
「昼でも蝶達が飛んで」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「こうして見られる」
「そういうことですね、ただ」
マスダはクリンソンに気付いた顔で言った。
「考えてみますと今の技術だと」
「温室があってその中で草花をもうけられてな」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「明るく出来れば」
「そうだ、しかしな」
クリンソンはマスダに笑って話した。
「すぐにこうすればいいとわかる人は多いか」
「夜に蝶達を舞わせると」
「そう言われてな」
それでというのだ。
「すぐに言える者がどれだけいるか」
「少ないですね」
マスダはそれはと答えた。
「やっぱり」
「そうだな」
「はい」
どうにもと言うのだった。
「これは」
「そうだな、だからな」
それでというのだ。
「これもまたコロンブスだ」
「コロンブスの卵ですか」
「私は確かに夜の中飛ぶ蝶達を見たかったがな」
「そうしたいにはどうすればいいか」
「すぐにはな」
それこそというのだ。
「出るか」
「そう言われると」
マスダは考える顔で述べた。
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