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天の船

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第二章

「出来るかもな」
「いや、絶対に無理だ」
「出来るものか」
「船が空を飛ぶなんて」
「古事記じゃないんだぞ」
「七福神の船でもないと」
 誰もがまさかと笑って否定した、しかし。
 一次大戦の話を聞いてだ、誰もが驚いた。
「倫敦が空から爆弾を落とされているのか」
「飛行機というものが出て来て」
「しかも飛行船が出て来たのか」
「気球みたいに空を飛ぶ船か」
「その飛行船が倫敦を爆撃しているのか」
「信じられないな」
「嘘ではない」 
 その話はすぐに真実とわかった。
「独逸はその飛行船を使ってだ」
「海を越えてか」
「その向こうの英吉利まで行って」
「倫敦に爆弾を落としているんだな」
「本当に」
「そうだ、だからな」
 実際にそうしているからだというのだ。
「本当にな」
「空飛ぶ船があるのか」
「飛行機だけじゃなくて」
「物凄いな」
「そんなものがあるのか」
 気球の時の様に驚くのだった、そして。
 日本でもその飛行機それに飛行船も造る様になった、やがて飛行機はジェット機にもなり人類は月にも達し。
 天国の平賀源内は笑ってだ、勝海舟に言った。
「なっ、気球はあってな」
「ああ、それからな」
 海舟は唸って応じた。
「飛行機や飛行船が出てな」
「人は空を飛べる様になったな」
「ああ、その時その場所で無理だと言ってもな」
「多くの人が思ってもか」
「他の場所では違っていることもあってな」
「それがそこにも届くな」
「そうなるんだよ、あの頃気球は日本じゃ考えもつかなくても」
 それでもというのだ。
「阿蘭陀とかにはあってな」
「おいらも亜米利加で観てか」
「飛行船なんてものが出てな」
「海も渡ってか」
「飛行機が出てな」
 そうなってというのだ。
「今じゃ世界中を飛び回ってるんだよ」
「源内さんが正しかったんだな」
「ああ、今無理でもな」 
 例えそうだとしてもとだ、源内は海舟に話した。
「やがてな」
「出来る様になって出て来るな」
「そうだよ、ないだの無理だの出来ないだのはな」
「先はわからないな」
「そうだよ、お月様にも行ったんだ」
 人間はというのだ。
「それじゃあな」
「それならか」
「ああ、もっと遠くに行くさ」
「人間はか」
「そうさ、日本もそうだしな」
「そうなんだな、じゃあこれからも観させてもらおうか」
 海舟は飄々と笑って言った。
「人間が飛ぶ姿をな」
「おいらと一緒にだな」
「ああ、そうしようぜ」
「それじゃあな、酒でも出してな」
「飲みながら観るか」
「一緒にな」
 源内は明るく笑って早速だった。
 酒を出した、そして海舟と乾杯して空の上から今の人間達を観た。彼も回収のその目は温かく笑っていた。


天の船   完


                  2025・1・12 
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