太子の挨拶
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第二章
「何かとお世話になりました」
「皇子の前世で」
「貴方の前世に」
「そうだったのですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「この度です」
「お礼を言われたのですか」
「左様です」
「そうだったのですね」
「まことにお世話になりました」
「まさか前世のこととは」
その者は驚いたまま皇子に応えた、そうしてだった。
皇子のお礼を受けた、だが皇室の方で摂政でもあられる皇子と比べると一介の民である自分はあまりにも違うと考えてだった。
恭しく礼儀を守って頭を下げた、そのうえで皇子以上に畏まって応えたのだった。
その後でだ、その一部始終を見ていた周りの者達は驚愕して話した。
「まさかな」
「前世のことまで覚えておられるとは」
「流石は皇子だ」
「並の方とは違う」
「それにだ」
さらに話すのだった。
「前世はあるのだな」
「御仏の教え通り」
「魂は輪廻の中にある」
「そして生まれ変わりを繰り返すのだな」
「それならだ」
そうであるならというのだ。
「御仏の教えは真実だ」
「前世は実際にある」
「そして御仏の教えもな」
「ならば信じなくてはな」
「絶対にな」
こう話した、そしてだった。
彼等は仏門を学びその教えを忘れなかった、それは皇子も同じであり。
生涯徳を積まれ摂政としても見事に働かれた、そして後世に名を残された。まるで神仏の様な方であられたと。
太子の挨拶 完
2024・11・11
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