| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

西遊記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第四回 悟空斉天大聖となるのことその九

「わしはな」
「我儘を言ったらいけないよ、けれどあくまで戻らないなら」
「連れ戻すな」
「腕ずくでね、じゃあやろうか」  
 三太子が言うとでした、その童子の可愛い姿がです。
 忽ちのうちに巨大な三面六臂の鬼神になりました、そしてその六本の手にはそれぞれです。
「斬妖剣にか」
「砍妖刀、縛妖索にね」
 哪吒はそれぞれの手にある武器を見つつ言います。
「降妖杵、綉毬にだよ」
「火輪だな」
「合わせて六つ、この六つの武器でだよ」
「戦うな」
「そうだよ、父上と兄上達が軍を率いられて」
「お主はわしと戦うか」
「そうするよ、はっきり言って僕は強いからね」 
 だからだというのです。
「覚悟してね」
「うむ、ではな」
 それではとです、悟空は応えて言いました。
「わしも全力で行こう」
「さて、どうして戦うのかな」
「お主の相手はわしがするが」
 ここで、です。悟空は。
 身体から毛を毟ってです、お顔の前にやって。
 指で摘まんでいるそれをふうっ、と吹きました。すると。
 何と悟空が何十人にもなりました、そのうえで言うのでした。
「敵軍とは分身が戦うとしよう」
「なっ、何十人も増えたじゃないか」
「これもわしの術、しかしお主と戦うのはわしじゃ」
「君自身なんだ」
「一対一でな」
 そのうえでというのです。
「戦うとしよう」
「正々堂々とだね」
「そうだ、はじめるぞ」
「勝つよ、絶対に」
 三太子は笑って応えてでした。
 一騎打ちに入りました、三面六臂で六つの武器を重要に使う三太子にです。
 悟空は如意棒で向かいます、すると勝負は完全に互角でした。
「何と、あの哪吒と互角とは」
「何という強さだ」
 軍を指揮しつつです、一太子と二太子はその一騎打ちを見て驚きました。そのうえで言うのでした。
「孫悟空という者強いとは聞いていたが」
「あそこまでか」
「その孫悟空が何十人も来たぞ」
「あの者の分身が」
「これはまずいぞ」
「すぐに陣を整えるぞ」
「そうせよ、これは手強いぞ」 
 父上の天王も言います。
「用心して守るのだ」
「そうします」
「ここは」
 二人の太子も頷きます、そして実際に方陣を幾つも敷いて守りを徹底させますが。
 悟空の軍勢が来るよりも先にです、何とです。
 何十人もの悟空の分身達が天王の軍に向かっていってです、方陣を次々に叩き潰し神界の兵達を吹き飛ばしていきました。 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧