幼馴染みの仕事
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第一章
幼馴染みの仕事
三つ下の幼馴染みの蜂須賀秀次のことをだ、OLの加賀美沙也はふと思い出した。卵型の顔で切れ長の二重の目に細く長い眉に紅の艶やかな唇を持っている。黒髪を伸ばし後ろで束ねていて耳が大きい。背は一六四位ですらりとしている。
それでだ、仕事から帰って実家の母に自室のマンションの中で尋ねた。
「ハッちゃんどうしてるかしら」
「あんたがよく遊んであげた?」
「そう、あの子ね」
母に言うのだった。
「どうしてるかしら」
「あの子ならいるわよ」
母はすぐに答えた。
「こっちにね」
「地元に?」
「実家にね」
そちらにというのだ。
「今もね」
「そうなの」
「だからあんたがこっちに帰ったら」
「会えるのね」
「ええ、あんたお盆とお正月には帰って来るでしょ」
「それはね」
沙也はそれはと返した。
「実家だからね」
「帰って来るわね」
「落ち着くし」
「だったらね」
それならというのだ。
「今度帰ってきたら」
「お盆近いし」
「会いに行ったら?」
「それじゃあね」
沙也bはそれならと応えた。
「お盆にね」
「あの子に会うわね」
「ハッちゃんにね」
こう言ってだった。
沙也はお盆に実家に帰った時にだった、彼の家に行こうと思った。だがその時に街の交番の前を通るとだ。
そこに立っている警官を見てだ、沙也は言った。
「まさか」
「あれっ、沙也さんですか?」
「ハッちゃん?」
背の高いきりっとした顔立ちの警官には面影があった。
「ひょっとして」
「はい、そうです」
警官、蜂須賀秀次はまさにと答えた。
「僕です」
「今どうしているかしらって思ってたけれど」
「実は高校を卒業して」
そしてというのだ。
「警官になったんです」
「そうだったの」
「県警に入りました」
「お巡りさんね」
「はい、駆け出しですが」
沙也に笑って話した。
「しかしです」
「頑張ってるのね」
「そうしています、あと学校を出た後は」
警察学校をというのだ。
「実家からです」
「通っているの」
「はい」
そうだというのだ。
「そうしています」
「そうなのね、どうしているかって思ったら」
それがというのだ。
「まさかね」
「警官なんて思わなかったですか」
「そうだったわ、けれどね」
「けれど?」
「真面目に働いているわね」
「はい、警官ですから」
秀次は笑って応えた。
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