西遊記
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第三回 孫悟空武器を手に入れるのことその九
「決して負けぬ」
「揉めれば大事になっていました」
「そうなっていればな」
その時はというのです。
「厄介であったが」
「そうはなりませんでした」
「ならよしとしよう」
「この度は」
「そしてだ」
天帝はさらに言いました。
「そなたに命じる」
「その孫悟空の使者にですな」
「左様、あの者に神界に来る様にだ」
その様にというのです。
「伝えよ」
「わかりました」
金星はすぐに応えました。
「それでは」
「うむ、ではな」
「花果山に下り」
「あの者に伝えるな」
「そうします」
「わかった、ではな」
「これよりですね」
「下界に下りるのだ」
金星に言われました。
「天帝の名において命じる」
「その名承りました」
金星も応えました、こうしてです。
早速花果山に入りました、すると金星の姿を見た猿達は神の神々しい姿と只ならぬ気に見るなり仰天しました。
「な、何だ一体」
「只者ではないぞ」
「まさか神様か」
「そうなのか」
「そのまさかだ」
金星は猿達に微笑んで答えました。
「私は太白金星だ」
「何と、金星様ですか」
「神々の中でもかなり高い位にあられ」
「神界の宰相であられる」
「そこまでの方とは」
「いやいや、驚くことはない」
金星は驚くばかりの猿達に今度は気さくに笑って言いました。
「私は私だ、それよりもこの度は用があって参った」
「用とは」
「一体何でしょうか」
「それで」
「そなた達の王に伝えたいことがあって参った」
そうだというのです。
「天帝からな」
「えっ、天帝ですか」
「これまた驚きました」
「神界の主様からとは」
「驚くばかりです」
「だからもう驚くことはない」
また笑って言う金星でした。
「それよりもそなた達の王に会わせてくれるか」
「はい、それでは」
「案内致します」
「水簾洞まで」
「そうさせて頂きます」
猿達も応えました、この時悟空は牛魔王、美候王、蛟魔王、鵬魔王、獅駝王、寝候王、遇戒王の六人の王達とです。
世に強い者達がいると聞いた者達同士で集まって話をして意気投合して義兄弟となってでした、宴を開いていました。
「いやいや、我等はそれぞれの神仏の使いであり」
「今は何かの役目があるとのことで前もって人界に下りているが」
「そしてそれぞれの地の妖怪達を治め人に害を為さぬ様にしておるが」
「ここにまた兄弟がおるとは」
「しかも石から生まれた猿とは」
「そこから神仙になったとは」
「珍しいな、いやわしもお主達と知り合ってな」
悟空は義兄弟となった王達に言います。
「嬉しい、ではこれからはな」
「我等は兄弟」
「仁義は守ろうぞ」
「お互い争っても命は奪わぬ」
「そもそも我等も神仏の使いで神仙でもある」
「そうであるならな」
「道に外れたことはせぬことだ」
こう言い合ってでした。
悟空と六王は義兄弟の誓いを結び宴を楽しみました、そしてふんだんに飲んで食べた後でなのでした。
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