印税もコツコツ
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第二章
ライトノベルの新刊の印税が入ってだ、小林は妻子を連れて回転寿司屋に入った。そして寿司を食べつつ言った。
「印税入ってよかったね」
「あの、お父さんいつも色々書いてるわね」
娘は笑顔で回転寿司のトロを食べる父に言った。四人用の席に三人で座っている。
「ライトノベルだけでなく」
「そうしているよ」
「そのお仕事の印税が少しずつ入ってない?」
「仕事の分だけね」
「一気に入らないのね」
「書いた麩だけコツコツ入るんだよ」
仕事の報酬としてというのだ。
「そうなんだよ」
「何かそれだと」
娘はハマチを食べつつ言った。
「お母さんのパートと同じね」
「そうだね」
父も否定しなかった。
「そう言われると」
「そうよね」
「そんなものだよ」
娘に優しい笑顔で話した。
「書く仕事も」
「コツコツなの」
「一気に書いて一気にお金が入るってことはないんだ」
「コツコツ書いてなの」
「コツコツ入るんだ」
そうだというのだ。
「あくまでね」
「そうなのね」
「そうだよ、他の仕事と同じだよ」
「どんなお仕事もなの」
「コツコツとやって」
そしてというのだ。
「コツコツと入って来る」
「一気にじゃないのね」
「一気に出来ることなんてないよ」
それこそというのだ。
「よく覚えておくんだよ、何でもコツコツ」
「やっていくものね」
「そうだよ」
「そんなものなのね」
娘はこの時は半信半疑だった、だが成長してとある野球場の職員として働く様になってわかった。自分の仕事も球場の他のスタッフのそれもひいてはチームの選手や監督、コーチもだった。
コツコツと働きコツコツと入る、野球選手も一気に入る様で練習し結果を徐々に出して生きているとわかった。それで父の言ったことはその通りだと頷いたのだった。
印税もコツコツ 完
2025・5・17
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