| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

西遊記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二回 孫悟空混世魔王を倒すのことその三

 男は手を頭にやって横に寝ている悟空にです、こう尋ねました。
「貴様が花果山の猿か」
「おう、そうだ」
 悟空は起き上がって応えました。
「わしが孫悟空だ」
「金色の毛をした猿とはな」
「いい毛並みだろう」
「ふん、猿は猿だ」
 大男はふんぞり返って言い返しました。
「所詮な、服を着ていてもな」
「猿は猿か」
「それに過ぎぬわ」
「そう言うお主は誰だ」
 悟空は大男を指差して問いました。
「混世魔王だと思うが」
「その通りだ」
 まさにという返事でした。
「我こそが混世魔王だ」
「やはりそうか」
「そしてだ」
 魔王はさらに言いました。
「この世で最も強い者だ」
「ほう、わしよりもか」
「猿に負ける筈がない」
 魔王は大きな声で断言しました。
「絶対にな」
「その言葉嘘ではないな」
「わしは嘘は言わぬ」
 これが魔王の返答でした。
「決してな」
「では嘘だったらどうする」 
 悟空はその魔王に問い返しました。
「一体」
「その時はお主に頭を下げてだ」
 笑ってでした、魔王は悟空に答えました。
「手下になろう、わしの手下達と共にな」
「郎党全員がか」
「そうだ、今ここに言うぞ」
「約束するな」
「誓いは破らぬ」
 決してという返事でした。
「わしの誇りに賭けてな」
「言ったな、ではこれから勝負だ」
「うむ、しかしお主は素手」
 魔王は身構えた悟空を見下ろして言いました。
「わしも刀を置くとしよう」
「それには及ばぬ」
 ですが悟空は余裕の笑みを以て答えました。
「お主はわしに一瞬で倒されるからな」
「猿如きにか」
「猿は猿でも石から生まれ仙術を極めた」
 魔王にこのことを告げました。
「わしは只の猿ではないぞ」
「猿は猿だ、倒せるものか」
「言ったな、では行くぞ」
「来るのだ」
 魔王は刀を置きました、そしてです。
 勝負がはじまりました、すると悟空は右手を首筋にやってそこから毛を抜きました、その毛を口の前にやってです。
 ぷいと吹きました、そのうえで言いました。
「皆わしになれ」
「おう」
「なるぞ」 
 早速返事がしてでした。
 毛の一本一本が悟空となりました、すると無数の悟空が雨あられの様に多くなって跳んだり跳ねたりして魔王に向かってきました。
 これには魔王も仰天しました、そのうえで驚きの声をあげました。
「なっ、これは」
「仙術の一つだ」
 本物の悟空もその中にいます、そのうえで言ってきました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧