西遊記
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第一回 孫悟空生まれるのことその十五
「大事をせんと旅立ちます」
「そうなのですか」
「それではですね」
「その時にですね」
「孫悟空もですね」
「動くことになります」
そうだというのです。
「時は動きます、ですがそれはかなりです」
「先のことですね」
「今よりも」
「遥かに先のことですね」
「私達の時でもそうであり」
そしてというのです。
「人であればです」
「尚更ですね」
「遥か先のことですね」
「そうなりますね」
「そうです、ですから」
それ故にというのです。
「私達は見守りましょう、そして私は天帝が動かれようとされるなら」
「その時はですね」
「止められますね」
「釈尊ご自身が」
「あの方を止められるのは私だけで」
そうであってというのです。
「私を止められるのもです」
「あの方だけですね」
「まさに」
「左様ですね」
「ですから」
それでというのです。
「あの方が青龍偃月刀を持たれるなら」
「それならですね」
「止められますね」
「その時は」
「そうします」
穏やかですが確かなお声で言われました。
「私は」
「そうした時も来るのですね」
「やがては」
「あの方が動かれる」
「その時も来ますね」
「そうなります」
こうお話しました、そしてです。
甘露のお水が出ますと皆で飲みます、そしてここで言われることは。
「美味ですね、それなら」
「はい、我等だけで飲んではなりません」
「神界にも送りましょう」
「そして人界にも」
「徳のある者に」
「慈悲は誰にでもです」
釈尊は優しい声で言われました。
「もたらすべきであり」
「恵みもですね」
「もたらすべきですね」
「そうですね」
「そうです」
まさにというのです。
「ですから」
「神界に送りましょう」
「神や仙人の方々にも飲んでもらいましょう」
「そして徳のある人達にも」
「そうしていきましょう」
「そしてです」
そのうえでというのです。
「誰もがです」
「幸せになる」
「悟りも得る」
「そうなる様にしますね」
「我々は」
「それがです」
まさにというのです。
「我々の務めです」
「仏の」
「左様です」
「釈尊の言われる通りです」
御仏達もまさにと頷きました。
「それではですね」
「時が来れば」
「我等もまた」
「宜しくお願いします」
釈尊は微笑んで言われました、その微笑みはこれ以上はないまでに優しく澄んだものでした。そのうえで先のことをお考えになられるのでした。
第一回 完
2025・2・15
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