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FAIRYTAIL〜星の王子様〜

作者:花神スギ
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16話~決別。ルーシィとヨゾラ~

16話~決別。ルーシィとヨゾラ~

 



 それは、昔の話し。
 ヨゾラがハートフィリア家にやって来たお話し。

「今日からここが、貴方の家です。ヨゾラ様……いえ、ヨゾラ辛いこともたくさんあったでしょうがもう、大丈夫、安心してください」

 ルーシィ・ハートフィリアの母、レイラ・ハートフィリア。
 傷つき心を閉ざしたヨゾラを抱きしめる。
 親友であった、ソラの忘れ形見。
 この子は私が守っていく。

 血は繋がってなくても、ヨゾラは家族。
 愛すべき存在。
 レイラは心に誓う。








「ママー!この子、全然喋らなくてつまらないよー」

 レイラにヨゾラが喋らないと言うのは幼き日のルーシィ。

 ヨゾラは、ハートフィリア家に匿われた後、身を隠すため使用人として過ごすことになっていた。

「………………………………」

 無気力にただ生きている。
 食事を食べ、働いて、寝る。
 その繰り返しの毎日、使用人として働くのはヨゾラの希望であり、何かしていないと落ちつかず心が壊れていく。

 ヨゾラの事情は、レイラの夫である、ジュードも知る。しかし、ジュードは何も言わず見守る。

「ルーシィ、ヨゾラはこれまで、大変なことを経験し……まだ、心の中で整理がついていないのです。ゆっくりと待ちましょう。」

「ふーん、わかった!じゃあ、あたしがヨゾラが元気になれるようにいっぱい!いっぱいお話しするね!」

「えぇ、よろしくお願いしますね」

 心に傷を負ったヨゾラ。
 彼を心配するレイラとルーシィ。




 それから、ルーシィは事あるごとにヨゾラに話しかける。

「ねぇ!あたしとお友達になりましょ?」

「………………………………」

「あたし……星霊のお友達は居るけど、それ以外にはお友達居ないんだ」

「………………………………」

「あたし、今日ね!ママとお買い物に行ったの!ねぇ、見て!このお洋服かわいいでしょう?」

「………………………………」

 ルーシィは、ヨゾラからの返事がなくても、毎日、毎日、会うたびにヨゾラに話をかける。
 返事がなくても、ルーシィにはそれだけで充分だった、ハートフィリア家の屋敷にルーシィと歳が近い者は居ない。

 ルーシィの中では、ヨゾラは友達認定。
 だからこそ、ルーシィは返事はなくとも話しかける。

 毎日話をかけるうちに、少しずつではあるが、ヨゾラにも変化が現れる。

 始めのうちは、ルーシィが話しかけても無視して使用人の仕事をしている、ヨゾラ。
 しかし、時間が経つうちにルーシィが話しかけるとルーシィの顔を見るようになった。

 今では、ルーシィが喋ると、まっすぐ話し終わるまでルーシィの顔を見ながら話を聞いている。

 ルーシィは嬉しかった。
 些細な出来事であるが、ヨゾラの変化がルーシィには嬉しい。

 少しずつ反応するようになった、ヨゾラ。
 そんな時にルーシィがヨゾラをある場所へ誘う。

「ねぇ!ヨゾラ!今日の夜ね!ママがお星様が綺麗に見える場所に連れてってくれるんだって!一緒に行かない?」

 仕事をしている、ヨゾラは一瞬ピタリと止まりルーシィの顔を見る。

「……………………………………」

「一緒に行こ?」

 ヨゾラの顔を覗き込むルーシィ。
 ジッとルーシィの顔を見つめるヨゾラ。

「ね?行こ?」

 ルーシィの誘いに、ヨゾラはコクリと頷く。

「やった!じゃあ、夜にね!ママにヨゾラも行くって言ってくるー!」

 ルーシィは、言葉はないが初めちゃんとした反応をして返事をしたヨゾラに嬉しくなったのか、レイラに報告しに走りだした。
 それほど、嬉しかった。













「うわぁー綺麗!ママ!見て!凄いお星様が綺麗!」

 夜となり、数人の使用人を連れ、ルーシィ、レイラ、ヨゾラは、レイラの星が綺麗に見える場所のお気に入りの場所に来ていた。

「ここは、ママの内緒のお気に入りの場所なんです、星天の星達が煌めきとても、美しい場所」

 レイラは光輝く星達を眺めながら言う。


 そして、ヨゾラもただ1人星空を見つめる。
 彼は何を思っているのか?
 ヨゾラは母である、ソラと共に見た星空を思いだす。



 【ヨゾラ?お星様綺麗でしょ?まるで、私達を包み込むようで清々しい気分になるでしょ?お母さんはね、貴方がお腹の中に居る時、このお星様達にお願いしてたんだ?ん?願い事聞きたい?どうしよっかなー?…………教えてあげる】

 ヨゾラの記憶には煌びやかな星の光で美しく綺麗な母親の姿。

 【貴方が無事に産まれて…………たくさんの人に……いっぱい、いっぱい……たくさんの人に愛される人になってくださいと…………愛に溢れた人生を歩んでほしい…………大丈夫、貴方はきっと、愛してくれる人が現れる……もちろん、お母さんもヨゾラのこと大好きよ?】

 母の言葉がヨゾラの記憶の中でよみがえる。
 今は、どんなに辛い状況であれ、必ず愛がヨゾラを救ってくれる。

「…………………………お母さん」

 ヨゾラの頬を涙が流れる。
 今は亡き、母を思いながら。


「ヨゾラ?泣いてるの?」

 ルーシィが、いつの間にかヨゾラの隣で顔を覗き込んでいた。

「…………………………!?」

 すぐに、ヨゾラは涙を拭う。
 そして、ルーシィは

「泣いたっていいんだよ?あたしはヨゾラのこと知らないけど……辛い時、悲しい時は泣いてもいいんだよ?」

「…………………………なんで?」

 久しぶりにヨゾラは言葉を発した。
 なぜならば、横に居るルーシィがヨゾラを見ながら涙を流している。

「だって!だって!……いつも、ヨゾラ、泣きそうな顔をしてる!あたしにだって分かるもん!なのに……ヨゾラは我慢してる。辛そうに悲しそうにしてるのに自分の感情に嘘を吐いてる!あたし……悲しいよ……そんな、ヨゾラを見ているのは……」

 小さいながらにも、人の感情に敏感で、ヨゾラのことを心配していたルーシィ。

「何かあたしにできるか分からないけど!あたしはヨゾラの力になりたい!…………ヨゾラ、あたしとお友達になりましょ?1人だと悲しくなっちゃうかもだけど、2人なら大丈夫……ね?」

 ルーシィは、ヨゾラに手を差し伸べる。

「ヨゾラはあたしの家族!一緒にみんなで楽しく生きていこう?」

 ヨゾラを家族と呼ぶ。
 ルーシィの一つ一つの暖かい言葉に、ヨゾラの凍った心が解かされていく。


「……………………やつ」

「ん?なんて言ったの?」

 小さなヨゾラの声が聞き取れず、ルーシィは聞き返す。

「本当にしつこい奴って言ったんだよ」

「え!?今、それ言うの?」

「ふふ……冗談だよ」

「えぇ!?初めて、会話したのに酷くない?」

「でも………………ありがとう」

 ヨゾラの顔は少し、笑っていた。
 ルーシィに跪く。
 そして、ヨゾラはルーシィから差し出された手を握り。

「……僕は今から、過去の自分を捨て産まれ変わります。……貴女のルーシィお嬢様の使用人として、生涯、ルーシィお嬢様にお仕えすることを誓います。貴女のため……全てを捧げます」

 握られた手は力強く。
 ヨゾラなりの再出発。
 ヨゾラの決断。


 ルーシィは

「ん?なんか違うんだけどな?あれ?あたし、何か違うこと言った?」

 ヨゾラの突然の変わり身に驚きつつも、ヨゾラが前を向いて歩きだすならばそれも、いいかと笑うのだった。




 ヨゾラとルーシィの星天の星だけが知る、お話し。



























「ねぇ!?ヨゾラ!貴方がレヴィちゃん達に酷いことをしたのは本当?」

 眠りから覚めたルーシィは、なぜかヨゾラに抱えられていることに驚きつつも、すぐにヨゾラから離れて対峙して、真実を知りたくヨゾラと対話していた。

「…………えぇ、間違いありません。全てはお嬢様を取り戻すための作戦。そのためならば僕はどんな事でもします」

 ルーシィの問いに、少しも悪びれる様子もなく淡々と自分がやったとヨゾラは告げる。

「変わった…………変わっちゃったよ!?ヨゾラはそんなこと、する人だとは思わなかった!……思いたくなかった!」

 信じていた。ヨゾラの口から告げられるまでは…………ルーシィの目からは涙が溢れる。

「僕は変わってはいません。あの日、ルーシィお嬢様に生涯仕えると決めた日から何も変わっていません。……変わったのはお嬢様の方です」

 ヨゾラは何も変わっていない。
 あの日の誓いから何も。
 お嬢様に全てを捧げると決めた日から。


「最低!見損なったはヨゾラ!」

 ルーシィの右手が、ヨゾラの頬を叩く。
 ルーシィの本気の平手打ちに、驚くヨゾラは叩かれた頬を撫でる。

「お嬢様…………?」

「あたしは帰らない!あたしは決めたの!もう、迷わない!妖精の尻尾はあたしの家族!家族を傷つけた貴方は許さない!!」

 ルーシィは、激しく激昂する。
 家族だったと本気で思っていたが、その人物からの裏切り。

「あたしは……ヨゾラ。貴方をもう家族とは思わない!あの日の約束も守らなくていい!!貴方はもうあたしの家族じゃない!!」

 ヨゾラを許すことはできない。
 自分の事を思っての行動だとも頭では理解している……だが。

 ここで、許してはいけない。

「ルーシィ……お嬢様……?」

「あたしは戦う、妖精の尻尾のみんなと幽鬼の支配者、パパ……いや、ジュード・ハートフィリア。そしてヨゾラ貴方とも…………じゃ、バイバイ……ヨゾラ……」

 ルーシィは、ヨゾラに背を向けてマグノリアに向かって歩きだす。

 ルーシィの決断。
 別れを決意する。



「………………………………」

 ヨゾラはただ、背を向け歩いているルーシィに声をかけることも、追うこともできなかった。
 ルーシィの姿が見えなくなるまで。

 黙って、立ち尽くす。

 2人の道は完全に別れたのだった。
























 その後、幽鬼の支配者のギルドに戻ったヨゾラはまっすぐ、マスターであるジョゼの元へ向かっていた。


「いやぁー、せっかく捕獲したというのに……何者かにコーネリア伯爵と従者が襲われ、ルーシィ・ハートフィリアを連れ去られるとは…………まったく、めんどうですね」

「どうせ?妖精のケツ共だろ?」

「ワタシ……せっかく、ジョゼに褒められた。台無し……妖精のケツ……許せない」

 ジョゼは、ガジルとロフォロンと会話をしていた。

「仕方ありませんねぇ?…………すぐに、準備をしろ……まずは妖精のケツ共を潰す!ルーシィ・ハートフィリアはその後だ」

「ギヒッ!了解!」

「ワタシ……がんばる!」

 そんな時にヨゾラが現れる。
 生気の感じられない瞳。
 どこか、重々しく、悲しそうに。

「失礼します」

「これは……ヨゾラさん。此度は残念でしたね、ですが安心してください、新たな奪還作戦を決行いたしますので」

「いえ、構いません。幽鬼の支配者のマスター・ジョゼ殿。お願いしたいことが」

 ヨゾラの沈んだ声に不思議に思いながらも

「私にできることなら」

 ヨゾラはジジョゼに願いを告げる。

「僕を……幽鬼の支配者のギルドに入れてもらえませんか?」

「ふふふ……ははははは……何が、あったかは知りませんが…………いいでしょう……では……手をこちらに」

 ヨゾラはジョゼに手を差し出す。
 ジョゼはヨゾラの手の甲にジョゼの手を重ねると

「これで、貴方は今日から幽鬼の支配者のメンバー……よろしくお願いしますね?」

「はい……ありがとうございます」


 ルーシィとは逆の手の甲にヨゾラは幽鬼の支配者の紋章を刻む。

「もういい……まずはお嬢様以外を全て……排除する……縁談も……ジュード様からの命令も……妖精の尻尾も……全て、この手で」

 左手の甲に刻まれた幽鬼の支配者の紋章を撫でて、ルーシィ以外を排除すると決めたヨゾラ。

 それが、ヨゾラの覚悟であった。

 妖精の尻尾のルーシィ。

 幽鬼の支配者のヨゾラ。

 2人の袂を別れた道は再び交差する日は来るのか?





 










 

 
 

 
  
 

 
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