11話~ルーシィを守れ!聖竜VS錆竜~
空は曇り、冷たい雨が降り注ぐ。
冷たい雨の中、2人の魔導師が戦っていた。
「聖竜の咆哮!!」
金色の光の咆哮。
妖精の尻尾の魔導師。
アリス・ミラクレア。
ルーシィを守るため、ルーシィを狙う襲撃者と戦う。
「きひっ!錆竜の咆哮!!」
錆鉄混じりの刃の咆哮。
幽鬼の支配者の魔導師。
ロフォロン・ステンクス。
聖母竜(ヴィエルジェ)のアリス。
偽銅(アカガネ)のロフォロン。
両者の咆哮は激突して消滅する。
戦いは突然であった。
ルーシィとアリスは、レヴィ達が眠る病院を後にして、一旦ルーシィの家へと向かっていた。
そんな時だった。
天気がよかったはずなのに突然の雨。
「雨?さっきまで、晴れてたのに?」
「変だな~、ルーシィ服貸して~傘がわりにするから~」
「誰が脱ぐかー!!」
そんな、のほほんとした、会話をしていた時ルーシィ達に近づいてくる者達が居た。
「しんしんと……貴女は誰?」
傘をさした1人の女性。
青髪でジメジメしている。
「アンタこそ……誰?」
「ジュビアは雨女……それではごきげんよう」
「って!誰なのよ!」
「ノンノンノン!ジュビアさまダメではございませんか?その方こそ我らがターゲット、ルーシィ・ハートフィリア様。私のことはムッシュ・ソルとお呼びください」
「そう……貴女が」
ルーシィは、身構える。
そして、共に居たアリスが戦闘態勢に入る。
「ルーシィ、こいつらは幽鬼の支配者だよ?確かエレメント4の2人だったと思う」
「幽鬼!?」
「あたし達に何の用!?」
「ジュビア達の任務は、ルーシィ・ハートフィリアの捕獲」
「マスタージョゼからのご命令でございます。しかし、まさか妖精の尻尾で有名なアリス・ミラクレア様がご一緒とは」
ルーシィ達の前に現れたのはエレメント4の2人、大海のジュビア、大地のソルであった。
「ルーシィ……下がって」
アリスは真っ直ぐと2人を見て、いつでも戦闘ができるように身構える。
「きひっ……きひひ!」
家の屋根の方から、声が聞こえてきた。
ロフォロンである。
「きひっ!ジュビア、ソル、ロフォロンがやる。手をだすな」
「ロフォロン殿、遅かったではないですか?」
「途中に美味しそうな、錆鉄が落ちてたからたべてた」
「ロフォロンちゃん、拾い食いはダメです。あとで兎兎丸に報告します」
ジュビアは、意外と厳しい。
それも、ロフォロンのため。
「兎兎丸に言っちゃだめ!ワタシ……怒られる」
エレメント4と仲が良いのか、ジュビア達はルーシィ達をそっちのけで話をしていた。
「ルーシィ……すぐに逃げれるようにしておいて。さすがのアリスちゃんでも3対1は厳しいかも?」
相手は、エレメント4の2人と三幽竜(トリニティ・ファントムドラゴン)の一角、偽銅のロフォロン、戦いは厳しくなるのは簡単に予想できた。
「アリス、あたしも戦う!3対2よ!」
「ん~?その言葉は嬉しいけどルーシィは戦力外かな~」
わりとのほほんとしながら、酷いことを言う。
実際にルーシィでは、実力不足。
「ひどっ!?」
結果的に3対1でルーシィを守りながらのハンデを持っての戦い。
「せめて、ナツかグレイかエルザが居たらな」
無い物ねだりをしても、しょうがない。
今、ルーシィを守れるのは自分だけ、守ると決めたのだ、絶対に守ると。
「ワタシ……お前知ってる!聖母竜(ヴィエルジェ)のアリス……滅竜魔法つかう、ワタシと一緒」
「アリスちゃんも知ってるよ~?偽銅のロフォロンでしょ~?…………レヴィ、ドロイ、ジェットに変な錆を付けたのはお前だろ?」
レヴィ達を苦しめていた、錆を付けた張本人が目の前に居る、アリスはにらみつける。
「きひっ……きひひ!ワタシからのプレゼント、気に入ってくれた?」
「誰が!?」
もはや、一触即発。
お互いにいつでも、始められる状態。
「ジュビア、ソル……こいつ、ワタシがやる」
「かかってきなよ!クソ錆が!」
聖竜と錆竜の戦いが始まった。
そして、冒頭に戻る。
「アリス!大丈夫!?」
「大丈夫~大丈夫~!アリスちゃんは平気~」
ルーシィの心配する声にアリスは、いつも通りののほほんと返事をする。
しかし、圧倒的な不利な状態になっていた。
すでに、ロフォロンの攻撃により全身は竜錆だらけ、序盤はアリスが押していたが、ロフォロンに正々堂々という言葉はない。
平然とルーシィに向かって錆竜の咆哮を放つ。
他の2人にも注意しながら戦い。
ルーシィを守りながらの戦闘。
気づけば、全身は錆竜の竜錆に覆われていた。
質が悪いことに時間が経てば経つほど、体に力が入りずらくなり、上手く聖の滅竜魔法を纏えなくなっていて、体を竜錆に侵食されていく。
そして、アリスを苦しめるもう1つは、体だけではなく、アリスが放つ魔法も竜錆に犯され、威力が半減している。
条件も悪かった。
雨女のジュビアのせいか、空は曇り冷たい雨が降り注ぐ。
太陽か月の光を浴びることにより、アリス自身を強化することも可能だが、この天気では絶望に等しい。
「最悪……体が鈍い……痛い……苦しい……レヴィ、ジェット、ドロイはこんなに辛い目に……あっていたんだね…………でも、負けられない!!」
アリスは妖精の尻尾の誇りを胸に戦い続ける。
「聖竜の聖拳!!」
アリスの金色を纏った拳はロフォロンには、当たらず空振りする。
「きひっ!きひひ!おまえもキラキラしている」
ロフォロンは、笑いながらアリスに告げる。
「キラキラ……と、呼ぶ。と言いたいとこだけど、もうキラキラ居る……だから、ワタシはおまえをキラキラ2号と呼ぶ」
ロフォロンは初対面の相手に、強敵認定やお気に入りになると勝手にあだ名をつける癖がある。
「誰がキラキラ2号よ……二番煎じにするな」
必死に虚勢を張るが、決着の時は着実に近づいていた。
「キラキラ2号、おまえ強い。前の妖精のケツの3人より……でも、ワタシ思う……キラキラ2号甘い!」
再び、ロフォロンの錆竜の咆哮がルーシィ目掛けて放つ。
「ルーシィ!」
アリスは、ルーシィをかばい正面から錆竜の咆哮をまともに受ける。
竜錆は、さらにアリスの体を蝕み、錆の刃は肌を切り裂く。
「ア、アリスーー!!?」
「へへっ……大丈夫……大丈夫~」
最後の力を振り絞り、ルーシィに心配させまいと笑顔を見せる。
しかし、彼女はもう限界だ。
その場に膝をつくのだった。
「キラキラ2号、甘い。これは戦い、どんな手を使っても勝つ、ジョゼが教えてくれた」
「……卑怯者」
「ワタシ、卑怯でいい。勝負は勝つために……どれだけのモノを利用できるか……これもジョゼが教えてくれた」
「絶対にルーシィは……」
「じゃ、バイバイ。キラキラ2号…………錆竜の烈拳!!!」
ロフォロンの錆竜の烈拳が容赦なく、アリスに直撃するのであった。
薄れゆく意識の中でアリスは
「(ごめんね……ルーシィ……守るって言ったのに……ごめんね……ナツ……ルーシィを任されたのに……ごめんね……ごめ……ん……ね)」
アリスは謝る。
友達のルーシィに相棒であるナツに
力尽き倒れる体。
アリスは………………
「って!守るって約束したんだよぉぉぉ!!」
最後の気力を振り絞り、魔法は纏えなくても
「なっ!?っ!?」
アリスの最後のただの拳がロフォロンの顔に直撃する。
守ると決めた執念の一撃が。
そして、アリスは崩れさり倒れる。
【勝者、ロフォロン・ステンクス】
ロフォロンは、殴られた頬を触りながら
「きひっ……きひひ!キラキラ2号……最後の1発……痛かった」
ロフォロンなりの称賛の言葉である。
お互いにロフォロンが卑怯な手を使わず、アリスがコンディションが良い状態なら、勝敗の行方は分からなかったかもしれない
「アリス!」
崩れさる、アリスを見てルーシィは叫ぶ。
これが、あたしが選択した結果なのかと。
先程のウィリアムとの会話を思いだしながら、ルーシィは涙を流す。
あたしは無力だ。
仲間に守られ……仲間が倒れていく。
あたしは………………。
「水流拘束!」
ルーシィの体を水の球体が包み込む。
ジュビアの魔法だ。
「捕獲完了…………しんしんと……」
「無傷で捕らえる!マスタージョゼも喜んでくれるでしょう!」
「ジョゼ!ワタシ褒めてくれる?頭撫でる?」
「んー、どうでしょうね。ルーシィ・ハートフィリア様に向かって咆哮を放っていましたから」
「……ソル?おまえ……わかってる?」
「ノンノンノン!私は何も見ていません!ロフォロン様がルーシィ・ハートフィリア様に咆哮を放っていたなどとは見ておりませぬな!」
「きひっ!ソル……話しわかる」
「ムッシュ・ソル。ロフォロンちゃんを甘やかしてはダメ…………しんしんと」
幽鬼の支配者のロフォロン、ジュビア、ムッシュ・ソルは、ルーシィを連れて悠々と凱旋するのであった。