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失われたユートピア

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第四章

「それでね」
「そうよね、それじゃあね」
「離れてよかったのね」
「ええ」 
 そうだというのだ。
「本当にね、戻りたいかしら」
「そんな詐欺とか内部対立とかね」
 乃理子は美里に話した、今は美里の部屋で話している。
「嫌だし」
「セクハラとかモラハラもでしょ」
「ええ」
 美里にまさにと答えた。
「本当にね」
「だったらね」
「ええ、もうね」
「戻らないわ」
「そうするわね」
「いい場所と思っていたわ」
 乃理子は心から言った。
「楽園だって」
「けれどその楽園はね」
「違ったみたいね、だからね」
 それでというのだ。
「これからはね」
「もう戻らないわね」
「ええ」
 そうするというのだ。
「私もね」
「そうしたらいいわ、楽園と思った場所も」
「実は違う」
「そうしたこともあってね」
「実際にそうだったらね」
「だったらね」 
 それならというのだ。
「もうね」
「戻らないことね」
「そうよ、それで今の場所でね」
「暮らせばいいわね」
「今は幸せでしょ」
 美里は乃理子に問うた。
「そうでしょ」
「凄くね」
「そう思うならね」
 それならというのだ。
「今の場所でやっていったらいいわ」
「そうするわ、それに実は今会社の先輩とね」
「お付き合いしてるの」
「そうなの、結婚もね」 
 それもというのだ。
「考えているし」
「いいことね、もっと幸せになってね」
「そうなる様にするわ」
 乃理子は美里の言葉に笑顔で応えた、そうしてだった。
 美里が出したワインとチーズそれにソーセージを楽しんだ、そうしたものも口にして幸せを感じた。
 結局乃理子は教団に戻らなかった、家の仏教の宗派の方に入り仕事を続け結婚もした。美里とも付き合いを続け幸せだった。今いる場所が楽園と考えて。


失われたユートピア   完


                  2025・1・14 
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