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金木犀の許嫁

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第六十二話 お見合い前にその十一

「実際によ」
「ならないことですね」
「若しなったらね」 
 その時はというと。
「終わりだしね」
「旦那様に逃げられますね」
「女の子だったらね」
「そうなりますね」
「何でも奥さん凄くいい人だったそうよ」
 真昼はその人の話もした。
「何しろ働かなくてもいいってね」
「言われて」
「それでずっと一緒にいて何かとしてくれた」
「そんな人ですね」
「それで二十年近く一緒にいたらしいわ」
「二十年近くですか」
「けれどそんな人でもね」 
 それでもというのだ、真昼は白華に対してどうかという顔になってそのうえで話を続けていくのだった。
「愛想を尽かしたのよ」
「それで離婚したんですね」
「そんな人だから」
「もうですね」
「誰でもね」 
 それこそというのだ。
「一緒にいられないわ」
「結婚してもですね」
「働かないだけも駄目だと思うけれど」
 夜空はその時点でと言った。
「他も何かとね」
「酷過ぎるわね」
「幾ら聞いてもわからないのは」
 それはというと。
「その人自分が偉いと思ってたのよね」
「それもこの世で一番ね」
「何が偉いの?」 
 真昼に問う様に言った。
「一体ね」
「全然偉くないわよね」
「だって何も持ってないわよね」
「ええ、お仕事もお金も立場もね」
「資格もよね」
「あと徳も人望もね」
「それで何が偉いのよ」
 わからないという言葉だった。
「一体ね」
「だから長男さんで」
「いや、長男さんって普通でしょ」
「それで甘やかされてね」
 それでとだ、真昼は答えた。
「勘違いしたのよ」
「そうなの」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「勝手にね」
「自分はこの世で一番偉いって勘違いしたのね」
「そうだったのよ」
「所詮人間でね」
 夜空はこうも言った。
「神様仏様と比べたら」
「何でもないわね」
「塵みたいなものでしょ」
 それこそというのだ。
「人間なんてね」
「神様仏様と比べたら」
「もうね」
 それこそというのだ。 
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