砲兵工廠
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第六章
「露西亜は変わらんな」
「ああ、あの国だね」
「今も戦争をしているな」
「他の国を攻めてね」
「あの国はソ連という名前の時もそうでね」
「明治でもだね」
「だから戦争になったのだ」
そうだったというのだ。
「日本が好き好んでだ」
「戦争をしたか」
「そんな筈があるか」
「あの時のロシアはとんでもなく大きかったからね」
「今思うと恐ろしい戦争をしたものだ」
金之助はまだラーメンを食べている、そのうえでの言葉だ。
「十倍の相手とな」
「あの時は戦争をするしかなかったね」
「すぐそこまで迫っていたのだ」
ロシアはというのだ。
「それで戦争をせずにな」
「いられたか」
「そして戦争をしてな」
「勝ったね」
「乃木大将もおられてな」
そうもしてというのだ。
「そしてだ」
「勝ってね」
「日本は生き残れたが」
「凄い戦争だったからね、日露戦争」
「だがあの頃からな」
金之助は苦い顔のまま述べた。
「ロシアはな」
「変わっていないんだ」
「そうだ」
まさにという返事だった。
「全く変わっていない」
「それで戦争をしているんだ」
「けしからんことだ」
金之助は今度は怒って言った。
「全く以てな」
「日露戦争は反対じゃなくて」
「あの戦争は当時殆ど誰も反対していなかった」
そうだったというのだ。
「勝てないと思ってもな」
「戦うしかなかった」
「こちらに来ていたのだ」
ロシアがというのだ。
「あの半島に入って来ていたんだ」
「それならもう」
「戦うしかなくな」
「皆そのことがわかっていたから」
「迷ってはいてもな」
陸軍の法皇と言われた元老山縣有朋も最後の最後まで迷っていた、兎角日本とロシアの国力差は歴然としていたからだ。
「戦うしかなかった、そして何とかな」
「勝ったな」
「そんな戦争だった、しかしあの国は」
「変わっていないか」
「全くな」
日露戦争の頃からというのだ。
「貪欲に侵略して来る」
「それであの時日本も戦って」
「今はウクライナだな。あの頃は露西亜の領土だったが」
「今は独立しているね」
「そして戦っているか、全く変わって欲しいことは変わっていない」
金之助は憮然として言った。
「困ったことだ」
「戦争はしないに限るな」
「全くだ」
金之助は憮然として答えた、そしてだった。
彼はそのままカルピスを飲み早乙女はワインを飲みラーメンそしてアイスクリームも楽しんだ。そうして早乙女がしこたま酔うと金之助から言ってきた。
「ではお開きにするか」
「うん、明日も仕事だし」
「それではな、では勘定はな」
金之助はそちらの話もした。
「割り勘ということで」
「お互いに」
「そうしないか」
「うん、それが一番あと腐れないし」
「わしは持っているが」
「高給取りでしかも作品も売れていて」
「だがこうした場合はな」
早乙女に笑って話した。
「その方がいいな」
「僕も奢らせては図々しいし」
「それではな」
「割り勘で払って」
「また機会があればな」
「ラーメンとアイス食べよう」
「上にジャムを乗せたな」
アイスクリームの上にというのだ。
「それを食べよう」
「またね」
二人でこんな話をして席を立った、そして勘定を済ませると店の前でまたと手を振り合った、そうして別れ早乙女は今の宿泊先のホテルに戻って寝た、その次の朝起きるとシャワーを浴びてすっきりしホテルのモーニングを食べてから仕事に向かったのだった。
砲兵工廠 完
2025・4・28
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