スラム街の下着
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第二章
「スラム街は貧しいんだろ」
「アメリカの最底辺の連中だろ」
「その最底辺でああか」
「あんなに下着持ってるのか」
「下着をあれだけ持ってるとなると」
「普通の服もそうだよな」
「貧しくても着る者に困っていないのか」
スラム街で干してある下着の多さに驚いて話した。
「アメリカってそうなのか」
「若ししなくても金持ちか?」
「最底辺の連中も」
「私達より遥かに」
アメリカはそこまで豊かなのかと思ったのだ。
「そうした国と戦うと」
「勝てるのか?」
「下着をあれだけ持っている国に」
「どうなのかしら」
次第に不安になった、それでだ。
共産党の高官は慌ててだ、映画製作スタッフ達に話した。
「あの作品は放送中止だ」
「中止しますか」
「そうしますか」
「すぐに別の作品に差し替えてくれ」
放送をというのだ。
「そしてソ連の人民の長所を宣伝する」
「そうした映画ですか」
「それを作ってですか」
「上映しますか」
「そうする、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「人民を鼓舞するのだ」
「わかりました」
「そうします」
「そうした映画を作ります」
「そして上映します」
製作者達は応えた、そしてだった。
実際にそうした、コスイスカヤはその話をアメリカで聞いたがカストフスキーにこれ以上はないまでに曇った顔で話した。
「あの、本当にです」
「アメリカは豊かだ」
「そうですね」
「我が国なぞだ」
カストフスキーは苦い顔で述べた、領事館の中でそうした。
「もうだ」
「貧しいですね」
「下着だけじゃない」
問題はというのだ。
「服自体がだ」
「全く違いますね」
「西側の服はいい」
そうだというのだ。
「東ドイツ海軍の軍服だが」
「あの軍隊のですか」
「士官の軍服はベルトが使えずファスナーもないが」
そうであるがというのだ。
「日本の海上自衛隊の制服はな」
「どちらもありますか」
「仕立ても官製でもよくてな」
「そうなのですか」
「そして食べるものもな」
「全く違いますね」
「ハンバーガーやコーラがあるか」
カストフスキーは忌々し気に言った。
「我が国に」
「それも普通に」
「スラム街では安くてな」
それでというのだ。
「誰もが普通にだ」
「買って食べていますね」
「しかしだ」
それでもというのだ。
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