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だからってなんだよー 私は負けない

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6-5-1

 お盆明けの月曜日、お母さんも私も仕事はお休みで家に居るからと、先生が訪ねて
くることになっていた。私 多分と思っていたけど、お母さんには、お昼ご飯をたべに来るんだってとしか言って無かったのだ。

 わざわざ ご飯といっても ちらし寿司に冷たいお蕎麦と野菜の天ぷら、椎茸のやいたものしか用意出来なかった。お昼 丁度ぐらいに先生はやって来て、食べながらなんだけど、お母さんは先生に無理やりビールを勧めていて、自分も飲み出していたのだ。

 ある程度、ご飯を食べ終わった時、先生はかしこまって

「今日 寄せていただいたのは、すぐりさんのことでお願いがあってまいりました」

「はっ ・・・そう どうぞ・・・何かしら・・・」と、お母さんの顔が急に引きつったように思えた。

「僕は すぐりさんのことが好きなんです 愛しています すぐりさんが、高校を卒業したら、僕と結婚させてください。お願いします。今は、教師と生徒と言った感じなのですが、そーで無くなったら、僕は すぐりさんに、いつも傍に居て欲しいんです」

「・・・そう 今日は その お話でいらっしゃったのかしら まさかと思っていたけど・・・やっぱり そうなの・・・」お母さんは、返事を避けていて、どう思っているのかしら・・・しばらく 沈黙の雰囲気だった。私も、多分とは思っていたけど、本当に切り出すなんて聞いていなかったから・・・少し、戸惑っていたのだ。だけど、はっきりと言ってくれたから、嬉しくもあったのだ。

「この子は まだ 子供なんですよ そりゃー 自分で事業もやっていて、みなさんに助けてもらって順調なんですけどね 世間の厳しさも経験して無いですし 私もこの子にはまだまだ 教えて行きたいことはいっぱいありますのよ 確かに、世間には負けないように強く育ってくれていますけど、学校の先生の妻としては、どうでしょうか? それに、先生のご両親もなんとおっしゃるか・・・」

「ウチの両親には 認めてもらう様にします。それに、僕は、すぐりさんと一緒に歩んでいきたいんです。すぐりとなら、お互いに、助け合えると思っています」

「あのね 私達母娘のことは、ある程度 聞いて知っているでしょ この子は小さい頃 貧乏で、いじめられたりして、きっと、辛い思いをしてきたのよ 私も必死で頑張ってきたわ ようやく、今 私もこの子も、平穏で幸せなのよ! その 幸せに、先生は割って入ろうとしているのよ わかる? 私達の思い」 

「それは・・・昔の辛かったことは、僕には・・・実感 できません。でも、僕は、すぐりを幸せにして、お母さんにも、良かったって思ってもらえるような家族を作っていきます。お約束します」

「お母さん お願い 私も 耀と一緒になりたい 少しでも、側に居たいの! お願い お母さんのことは大好きよ! でも 耀とは違うの お願い!」

「・・・すぐりのことを大切にしてくれるんなら、仕方ないわよね でも、私は、反対もしないし、賛成もできないわ だって まだ、お母さんにとっては、すぐりは子供なんだものー もっと 一緒に過ごしたいわよー 娘になったあなたと・・・先生のご両親のご意見もお聞きしたいわ それで 良い? もちろん 先生には、不満なんてないのよ すぐりをここまで、大切にして導いてくださって、感謝もしています」

 ― ― ― * * * ― ― ―

 8月の末 耀と一緒に彼の実家に向かった。ちょうどナカミチの感謝祭というのに合わせた。去年は私の都合で来れなかったのだ。今年の場合は、近くの駅から待ち合わせて、一緒の座席に座っていた。もう、彼も私のとのことも隠そうとは思っていないみたいだった。ずぅーっと 彼に引っ付いたまま、ナカミチに着いたのだ。

 お昼の営業を終えたとこで、店長の清音さんが迎えてくれて

「いらっしゃい 今日は 少し 大人っぽいね 白いワンピース 素敵よ うふっ そのひまわりも・・・可愛いわよ」

 私は、白のワンピースだったから、アクセントにと、袖のところに小さなひまわりの花をつけてきていたのだ。家の方のリビングにはオーナーが待っていて

「すぐりちゃん いつ 以来かしらね ずいぶんときれいになって、大人びたわね あなた達 お昼はすませたの?」

「うん マクドしてきた」

「そう マクド・・・」

「僕達のほうには無いから 珍しいんだよー」

「まぁ 晩御飯は お店がいいの? それとも、こっちで食べる?」

「あー どーしようかなー すぐりはどっちがいい?」

「私 久し振りだから お店のん 食べたい」

「じゃぁ 9時過ぎね メニュー決めといて 伝えておくからー」 

 と、私には何となく冷めたような言い方に聞こえたのだ。

 晩御飯までの間、時間を持て余していて、夕方過ぎになって、お爺さんが仕事を終えて来て、話相手になっていたが、8時過ぎには清音さんが声を掛けてくれて、お店に向かった。私は、もちろん(愛の山への誘い)を、耀はハンバーグの定食を注文していた。いつものことながら、おいしくって感動していたのだ。

 食べ終えた時は、もう10時近くになっていて、お宅のほうに戻った時には、お父さんも帰って居て、晩御飯も済ませたみたいで、リビングでハイボールを飲み始めていた。

「ちょうど良かった お父さんとお母さんに話があるんだ。お母さんも座って下さい」と、耀が・・・多分 私達のことを言ってくれるんだろう。私は、緊張し始めていた。



 
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