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ロマン詐欺

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第一章

                ロマン詐欺
 今年三十歳になる学校の教師鯖原真由美は結婚したいと思っている、それで所謂婚活にも熱心だが。
 母の愛子にだ、実家に帰った時に言った。一五四位の背で細面で色白の童顔で大きな目は黒目がちで黒い眉は細く唇はピンクだ。黒髪を伸ばし額の部分を完全に隠し胸はないが腰は安定した感じである。母もそっくりな外見だ。
「あの、婚活アプリに登録しているけれど」
「変な人に引っ掛からないでね」
 母は娘にすぐにこう返した。
「わかってると思うけれど」
「わかってるわよ、それでね」
「それで?」
「こんな人いるのよ」 
 アプリに登録しているある人物のプロフィールを見せて話した。
「凄いでしょ」
「何この人」
 愛子はそのプロフィールを見て目を見開いた。家の居間のテーブルに座って羊羹とお茶を囲んでいる中でそうなった。
「凄いわね」
「会社の社長さんでね」
「上場の」
「三十二歳でね」
「慶応卒ね」
「実家は資産家でね」
「財産は何十億ね、それに」 
 プロフィールの自己紹介をさらに見つつ言った。
「タワマン暮らしで」
「都内のね」
「それも最上階」
「趣味はヨットに自動車で」
「車はジャガーね」
「そう、どう思うかしら」
「詐欺ね」
 冷静にだ、母は述べた。
「これは」
「そうとしか思えないわね」
「それかネタよ」
 それだというのだ。
「これは」
「そうよね」
「他には思えないわ」
 全くというのだ。
「もうね」
「そうよね」
「これでこの人とお会いしてね」
 そうしてというのだ。 
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