犬はすぐ起きる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「それでもな」
「すぐに起きるでしょ」
「ああ、さっきみたいに大きな声が出たりな」
「大きな音でね」
「すぐ起きるな」
「犬はそうなのよ」
「すぐに起きるか、そういえばな」
ここで文太はあることを思い出して言った。
「猫もよく寝てな」
「寝る子が猫の言葉の元って言われてる位ね」
「何か音がするとすぐに起きるな」
「犬も猫も眠りが浅いのよ」
そうだというのだ。
「よく寝てもね」
「そういうことか」
「そう、すぐにね」
「起きるんだな」
「そうなのよ」
「よく寝ても眠りが浅いか」
「野生の名残でしょうね」
百合子はその為にと話した。
「やっぱりね」
「そうか、しかしな」
それでもとだ、文太は百合子に話した。
「別にうちはな」
「野生の世界みたいに危険はないわね」
「そうだけれどな」
「それでも名残りよ」
そうだというのだ。
「それでよ」
「何かあるとすぐに起きるんだな」
「眠りが浅くてね」
「そういうことか」
「そうよ、そしてすぐに起きて」
百合子はふわりを見つつ夫にこうも話した。
「またすぐにね」
「寝たな」
「眠りが浅いけれどね」
「よく寝るな」
「犬はね」
また眠りに入ったふわりを見ながらの言葉だ、見ればふわりは実際に頭をクッションの上に戻してだった。
寝ていた、目を閉じて静かに息を出しているその顔はとても幸せそうであり夫婦もその顔を見てついつい笑顔になったのだった。
犬はすぐ起きる 完
2025・4・22
ページ上へ戻る