ぼったくりの店
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第一章
ぼったくりの店
池田行人は家で家族として暮らしている孫夫婦の子で曾孫で高校生の隼人にこんなことを言った。息子夫婦も一緒で四世代家族となっている。
「ぼったくりの店がなくなったな」
「犯罪だろ」
曾孫は皺だらけの穏やかな顔の曽祖父に言った、見れば面長で残り少ない髪の毛は全て白くなっている。痩せていて背筋はまだしっかりしている。彼自身の顔は曽祖父と同じ面長で眉が太く目とくちはきりっとしている。黒髪はスポーツ刈りで長身ですらりとしている。
「ぼったくりって」
「いや、昔は多かったんだ」
「昔って何時だよ」
「昭和三十年代はな」
「そうなんだな」
「繁華街に行けば」
そうすればというのだ。
「そうした店がな」
「あったりしたんだな」
「だからそうだと聞いたお店には入らないで」
ぼったくりと噂のある、というのだ。
「はじめて入る店はな」
「気を付けていたんだ」
「そうだったんだ」
「昔はそうだったんだな」
「ヤクザ屋さんがやっていたりしてな」
店をというのだ。
「働いていた頃はよく何処がそうだとか話したんだ」
「酷い話だな」
「酷くてもその頃は普通にあったんだ」
ぼったくりの店がというのだ。
「今は聞かなくなっていいな」
「昔がおかしいんだよ」
隼人は行人に言った、そんな話を高校生の頃にしてだ。
大学生になってだ、曽祖父に眉を顰めさせて話した。
「ちょっとまずいものが出てな」
「高い勘定払ってか」
「ぼったくりだってな」
その様にというのだ。
「言われてるよ」
「その店はか」
「俺は行ったことないけれどな」
それでもというのだ。
「量は少ない、まずい」
「それで高いか」
「最悪だよ」
「いや、それはぼったくりじゃないぞ」
行人は隼人に笑って話した。
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