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ボーイズ・バンド・スクリーム

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⭐︎第28話 心機一転

 
前書き
みなさま、おつトゲです!これからしばらくはバンドリとコラボして書いていきます!時系列が難しいのですが…川崎ベイキャンプでのライブ後からトゲダイ対バンまでをまずは書いていきたいです!それでは、本編をどうぞ! 

 
「やっぱり対バン、乗り気じゃないのか?」

「そういうわけじゃないけど…」

瑞貴は気怠げな雰囲気でリビングのソファに横になりながら春樹と話す。普段なら春樹のポジションだ。今日は春樹のほうが珍しくリビングの椅子に座っている。
ベイキャンプのライブ後、ONES CRY OUTに大きな動きがあった。事務所からのスカウトがあった。ユナイテッド・アーチャーズ。大手セレクトショップ、ユナイテッド・アローズ傘下の芸能事務所らしい。現在は答えを保留にしている。事務所に入ることで今ワンクラが目指している音楽の方向性がズレるかもしれないからだ。主に俊哉の意見ではあるが、瑞貴も同意見である。
さらにONES CRY OUTとRoseliaの対バンが急遽決定した。Roseliaの所属する芸能事務所の意向らしい。世はガールズバンド時代であり、本格志向の実力派とされるRoseliaは音楽業界からの評価も高い。一緒に名前が上がればワンクラの知名度は確実に上がるはずだ。
Roselia。青薔薇のアーティストロゴが印象的だ。ライブ衣装は上品で洗練されており、どこかモードな印象を受ける。ボーカル、湊友希那。彼女の父もロックバンドを組んでいたはずだ。彼女の歌唱力もさることながら他のバンドメンバーも演奏技術が高い。アイドルのようなポップな曲調ではなく重みのあるロックサウンドだ。ダークな曲調が、どこかワンクラと似た雰囲気を感じる。共にライブをすることで、より高みを目指せるだろう。

「彼女たちは、どう思ってるんだろうなと思ってさ。こっちはインディーズのバンドでしかない。対バンのメリットは薄いからな」

「話題性だろ?白石大介の孫、期待の新星ボーカルが率いるインディーズバンドと実力派ガールズバンドの対決って。字面だけで面白くね?」

春樹の考えは案外、的を得ているかもしれない。ちなみに彼はワンクラが事務所へ所属することに賛成している。このスカウトは瑞貴のコネではなくバンドが実力で勝ち取ったものであり、また事務所も瑞貴たちの音楽性を最大限尊重したいと言ってくれているからだ。
事務所に所属すれば安定した収入はもちろんのこと、メディアへの露出度も上がる。より多くの人に曲を聴いてもらい世間に評価されれば瑞貴も祖父の七光りではなく実力を認めてもらえるだろう。懸念すべき点はただ一つ。バンドの音楽性が失われないかどうかだけだ。

「てか瑞貴、そろそろバイトの時間じゃね?」

「そうだったな…行ってくる」

瑞貴は都内のコンビニでバイトをしていたが、ベイキャンプのライブ直前に閉店になってしまった。新しいバイト先を探そうと思っていたところに偶然、良い流れで採用が決定した。RiNGの喫茶店である。
RiNGは複合型のライブハウスでありCiRCLEというライブハウスの2号店にあたる。CiRCLEの先祖であるライブハウス、SPACEのオーナーの都築詩船と瑞貴の祖父は知り合いだ。瑞貴がロックバンドのボーカルということもあったためか採用は早かった。

「おう、立希。今日もよろしくな」

「…どうも」

椎名立希。MyGO!!!!!というバンドのドラマーだ。クールビューティーといった雰囲気で吊り目で言葉足らずなところはあるが、真面目で面倒見が良い一面があるのを知っている。RiNGのカフェで働くバイト仲間だ。

「うわあ〜っ!」

「戸山先輩!?」

「俺が見てくる!立希はここにいて」

喫茶店の倉庫のほうで香澄の声がした。立希に言うや否や瑞貴は香澄のもとへ駆けつける。彼女は尻餅をついていた。

「あっ、瑞貴さん!こんにちは〜!えへへ〜、転んでるとこ見られちゃいました…」

「香澄のバカッ!怪我でもしたらどうするんだっ…!」

「うう〜、ごめんなさい〜」

戸山香澄。太陽のような底抜けな明るさと言うのだろうか。RiNGの元気印である。Poppin’ Partyというバンドのギターボーカルだ。通称ポピパ。学校の同級生で結成したガールズバンドである。現在は高校3年生らしい。
瑞貴が咄嗟に大声を上げると香澄は明るい表情から一変して悲しげに俯いてしまった。星型の髪も心なしか水で濡れて垂れ下がっているように見える。

「あっ、ごめん…心配で言い方がキツくなった。痛いところはないか?立てるか?ほら、手を出してくれ」

「大丈夫ですよ〜!ありがとうございますっ!」

香澄は瑞貴の手を取り立ち上がる。特にどこも痛がってはいないようだ。怪我も見られない。瑞貴は小さく安堵のため息をつく。

「何を取ろうとしたの?」
 
「コーヒー豆がなくなりそうだって立希ちゃんが言ってて、頑張ったら取れるかなと思って」

「棚の上の物とか重い物とかは取るから。俺が来るまで待ってろ。お前に怪我させたら沙綾に合わせる顔が無いからな」

「はいっ!もうしません!」

「…悪かったな、キツく言ったりして」

「大丈夫です!心配してくれてありがとうございます!」

香澄は瑞貴に満面の笑みを見せる。天真爛漫が服を着て歩いているような子だ。彼女がいるだけで、その場の雰囲気が明るくなる。彼は大声を出してしまったことに罪悪感を覚えた。

「いらっしゃいませ〜!あ、友希那先輩!」

「いらっしゃいませ」

瑞貴と香澄が倉庫からカフェに戻ると1人の女性がそこにいた。銀髪に紫が入ったような綺麗な色のロングヘアに琥珀色の意志が強そうな瞳だ。

「こんにちは、戸山さん。白石瑞貴さんはいる?」

「俺を探してるの?湊友希那…か?Roseliaのボーカルの」

「ええ、そうよ。少し時間はあるかしら?」

「ええ〜!?お二人は知り合いだったんですか〜!?」

「いえ、初めましてよ。戸山さんはまた後で」

「わかりました!」

「バイトまで少し時間あるし…15分ぐらいなら。大丈夫か?」

「かまわないわ」

急遽、対バンが決まったバンドのフロントマン同士の初顔合わせだ。瑞貴はどんな話だろうと疑問に思いながら彼女と向き合うのだった。 
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