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ボーイズ・バンド・スクリーム

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第27話 空白とカタルシス

 
前書き
みなさま、おつトゲです!今回はついにトゲナシトゲアリ回です!今回でベイキャンプを終えようと思っています!それでは、本編をどうぞ! 

 
BAYCAMP、2日目の夜。メインステージでダイヤモンドダストのライブを観た瑞貴たちONES CRY OUTのメンバーは、もう一つの小さいステージに移動していた。トゲナシトゲアリのライブを観るためだ。人気のないバンドは小さいステージに回されるが、トゲトゲは知名度と活動歴に反比例して注目度が高い。芸能事務所からもスカウトが来ており、このフェスで観客の印象に残るライブができれば契約できるらしい。生憎の霧雨に見舞われ、人の入りもまばらである。

「君の推しがもうすぐ来るで?『桃香ー!愛してるー!』って言わんでええんか?」

「からかわないでくださいよ…」

「瑞貴、お前は今日から芋男爵だっ!」

「金清。さすがにそれは意味分かんねぇって」

「ひゅーひゅー!」

「健斗ダマレ」

「春樹さん!瑞貴さんが俺に冷たいです!」

「知らねー」

「春樹さんも冷たいの!?俺の周りだけ気温、超極寒じゃん!北極レベルなんですけど!?」

ONES CRY OUTのメンバーは、いつも通りのやり取りをしながらもどこか浮き足立っていた。ライブの開演前、演奏が始まる瞬間を今か今かと待つ高揚感が瑞貴は好きだった。
ステージに立つのは桃香、すばる、智、ルパの4人。仁菜の姿がないと思った矢先、走って来た彼女はいきなり桃香のギターをぶんどってギターをかき鳴らす。

「ギター弾けませんっ!」

仁菜はマイクに向かって大声を出した。つかみは上々で観客の笑いを誘う。トゲトゲメンバーは茶々を入れつつメンバー紹介をしていく。MCは初々しいが回数を重ねたような慣れも感じる。

「ドラムの〜!」

「…すばるで〜すっ!」

今までのライブでは祖母に遠慮してか女子高生キャラ、プレアを名乗っていたすばる。そんな彼女が今日初めて本名を名乗った。トゲナシトゲアリのドラマーとしてやっていく決意表明なのだろう。
ついに演奏が始まった。新曲は静かな入りだ。そこから曲は疾走し、叙情的なキーボードが入り込む。仁菜の低音も高音も耳に心地良い。熊本への帰省で、どこか吹っ切れたのか歌のキレが増している。あらためて聴くと、とても10代の歌声とは思えない。作曲したのは桃香だろうか。ボーカルの良さが存分に発揮できていた。ギターソロや他の楽器もうるさくなりすぎず均整が取れていて聴き応えがある。

(そっか。プロとしてやっていくつもりなんだな)

瑞貴は彼女たちの演奏から本気で音楽を仕事にしていく気概のようなものを感じ取った。
仁菜が叫ぶ。桃香が吠える。すばるのドラムが疾走する。ルパのベースが歪む。智のキーボードが観客の胸を抉る。怒りも喜びも哀しさも、ぜんぶ歌にぶち込むように。これは紛れもなく、彼女たちの心の叫びだ。
観客の歓声が夜に溶けていく。トゲナシトゲアリのこれからを応援しているようだった。 
 

 
後書き
次回から本格的にバンドリコラボを書いていくつもりです。ガルパのモチベが高すぎて執筆時間がない…もう少し上手くフルコンが取れるようになれば時間が確保できるので頑張るしかないですね!それでは、また! 
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