だからってなんだよー 私は負けない
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5-4
先生に買い付けのことを相談すると
「なるほどなぁー そーなるかー わかった 直ぐに 清音叔母さんに来てもらうよ」と、言っていたけど、なんとかなるのだろうか
次の日曜日の朝、清音さんは独りでバイクで現れて、私と一緒に池浦さんのとこに行って、日曜は漁も休みなので、ご主人も居て、話をしてくれた。
昨日 炊きあがったという 鮎のやわらか煮を試食して、「おいしいー お客様の喜ぶ顔が浮かぶわー」と、言った後、仕事の話になって。漁師さんからの魚の買い取り価格は相場より安く引き取ることの無いようにと、そのことについて製品価格を引き上げる場合には、相談に応じるので言って欲しい。それと、総量については、無理の無い範囲で上限の量についての取り決めをしたのだ。こちら側としては、今までの漁師さん達の仲間のルールを乱すつもりは無いのでと、強くお願いしてくれたのだ。池浦さんも、快く承諾してくれた。
「店長 ありがとうございました。わざわざ 駆けつけてくれて・・・本当なら、私が 対応しなきゃぁなんないのですけど・・・」
「いいのよ こんなこと すぐりちゃんには、まだ 無理よ 耀ちゃんは先生という立場だから、出て行く訳にいかないしー 今回の解決策は耀ちゃんが考えたのよ すぐりちゃんを後押ししているから、責任があるってね」
「先生が・・・」
「そうだ これっ プレゼント 私からね 夏のパジャマ ズボンは膝丈ぐらいのにしたわ 冷やすとよくないからね」
サッカー地でつゆ草に蛍が跳んでいる絵柄のもの それと、ピンクで小さなお花の刺繍が散りばめてあって縁がフリルでふぁふあとしているブラとショーツのセット。
「わぁー 可愛いぃー ありがとうございます 素敵!」
「いいのよ 私 子供居ないでしょ だから、すぐりちゃんは娘みたいなものだからー じゃぁ 私 お店あるから、帰るね 頑張ってね 勉強とお仕事」
家まで送ろうかと聞かれて、私は、友達のところに寄るからと、貸してもらっていたヘルメットを返すと、私の背中をポンポンとして、バイクを走らせて帰って行ったのだ。
その後、ひかるちゃんチに寄ってみた。ひかるちゃんも、丁度お父さんも居て、私は、池浦さんとのことを報告したのだ。
「そうか それは良かった その すぐりちゃんが納めているとこってのも、しっかりしたお店なんだな! 直ぐに、対応してくれたんだ。すぐりちゃんも その信用を得るのに、苦労したんだろうにな 立派なもんだよー お母さんのことも、食堂をやっていた時から知っているが、しっかりとした人だぁ よく働くし、すぐりちゃんを育てるのに、一生懸命でな ひかるから聞いたんだが、今度は、少しでもお母さんの手助け出来たらって、今のこともやっているんだってね 偉いなぁー あの人も真直ぐに良い子を育ててるんだね」
「そんなぁー 私 お小遣い程度にってだけですよ」
「そうかな お小遣い程度にって言うけど 中学生が数十万の現金を出してハイって払うか? まぁ それはいいやー でも 池浦さんも君のこと感謝していたぞ」
「はい 喜んでもらえているんなら 良かったです」
「ひかる なんか 変わった子と友達になったな! そうだ これから、敦賀に焼肉に行くんだ 坊主が寮なんでな たまには、肉を食べさせようと思ってな 一緒に行かないか? なぁ ひかる?」
「そーだよ 一緒に行こうよぉー お兄ちゃんも来るんだからー ねっ!」
「はぁー とーしょーかなー お母さんに聞いてみないと・・・」
結局、おじさんの運転で、ひかるのお母さんも4人で敦賀に向かって、駅に近い焼肉屋さんの前でお兄ちゃんらしき人が待っていた。
「おぉー 元気そうだな どうだ レギュラーは?」と、叔父さんは言いながら、店に入って行った。
「まだまだだよー 1年生もみんな上手くてな」
4人掛けのテーブルなんだけど、お兄ちゃんは短いほうの縁に椅子を持ってきて座っていた。さっそく、おじさんがメニューを指しながら注文していて、最後に自分だけ生ビールと言っていた。その間もお兄ちゃんは私をチラチラと見ているので
「お兄ちゃん 愛崎すぐりさん 知っているでしょ! 私 お友達になったの!」
「あっ あぁー 知っているけどなー なんて言うか・・・あの子なんか・・・ちょっと 見ない間に・・・」
「可愛くなったって言いたいんでしょ! わかる」
「ん まぁー 俺 見る眼 おかしいんかなー」
「そんなことないと思うよ 私から見ても 可愛いよ! 前はみんなが偏見で見ていたのよー あのね すぐりにお兄ちゃんが可愛いって言っていたよって そしたら、すぐり お兄ちゃんのこと応援しなきゃぁーって!」
「ひかるぅー そんなー」
「おぉー おー 頼むよ 頑張って 甲子園 行くからな そして、早いうちにレギューラーも掴むよ!」
「そうヨ! こんなに可愛い妹と女の子が応援するんだからね!」
「可愛い妹? ・・・」
「ふん 何よぉーぉ なんで そこで聞き返すの!」と、ひかるちゃんは焼けた野菜ばっかりをお兄ちゃんのお皿にのっけていた。
「おい! 俺は 肉を食べたいんだよー」
「いいの! お肉の前に野菜よ! 野菜野菜 肉 野菜野菜よ アスリートの鉄則 豚には野球は出来ないわ」
言い合ってはいるが、兄と妹 仲が良さそうなので、私はひとりっ子だから、羨ましかったのだ。満腹になって、お店の前で別れる時
「今回は甲子園に行けてもベンチには入れそうも無いけど、秋には試合に出れるように頑張るよ そしたら、応援に来てくれるかなー?」と、私に言ってきた。
「はい いきます!」って言っちゃった。陽焼け顔の坊主頭で真直ぐで清潔そうなんだもの・・・その時、ちょっと なびいてしまった。
帰りはお母さんの運転だったんだけど、車の中でひかるが
「すぐり お兄ちゃん その気になってしまったかもよー いいの? すぐりって 悪い女の子よねー」
ひかるは、私が先生のことを好きなのを知っているから、そのことを言っているんだろう。貫一兄ちゃんのことだって・・・私って 浮気っぽい女なのかも・・・。
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