だからってなんだよー 私は負けない
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5-2
2年生になってから、お弁当なんかを4人で一緒に食べていたから、直ぐに志津川ひかるちゃんとも仲良くなって
「すぐりちゃん 今度 お休みの時 一緒に勉強しようよー お昼に焼きそばもつくろー」と、誘われて・・・。
彼女の家は、琵琶湖に近い方なので、私のとこから歩くと1時間近くかかるのだ。お母さんにその話をすると、電動アシストの自転車を貸してくれると言っていた。お母さんは駅までは、その自転車で行くのだけど、夜 帰ってくる時は、国道沿いは危ないからと、途中の駅までにして、そこに、自転車を止めて、後は歩くことにしているらしい。
「だけど すぐり 自転車 乗れたっけぇー?」
「乗れるよー たぶん 小さい頃 貫次に教えてもらったもん」
「小さい頃・・・何年になるの?」
「えーとおー 3.4年・・・ あー でも 篠田さんとこの空地で練習していくし、ヘルメットもね 貫次がもう 使わないから くれるってー」
「そう 車にだけは気をつけてね」
と、言う訳で、土曜日に仕事を終えて、荷造りをした後、貫次に見てもらって、とりあえず練習したのだ。今日も、お母さんは、自転車を置いていってくれていた。まぁまぁ 普通に乗れることがわかって、自分でも安心していた。
「後ろからダンプなんかに追い越される時、風にあおられるから、ハンドル取られんよーに気を付けろよ」と、貫次は心配していてくれた。
日曜 10時前にさっそう? と自転車で坂を下って行った。自動車の修理工場をやっている ひかるちゃんチに着いたら、外に出て待っていてくれた。
「えへぇー お母さんの 借りてきちゃったー」
「そーなんだ 私も自転車って持ってへんねん お兄ちゃんが置いて行ったんあるけどなー 乗るってこと無いものなぁー」
「そーなんやー 今まで・・・自転車でどこへ行けってゆうねんって調子やもんなー 遊びに行くとこも無いわー」
「そう そう 行くとこなんか あらへんわー」と、二人で自虐的に笑い合っていた。
ひかるちゃんの部屋に案内されたけど、薄いブルーで統一されていて、ちゃんと片付いて明るくてきれいなお部屋だった。ベッドの上に胴の長い大きな猫のぬいぐるみがあるだけで、他には何にも飾りのない部屋。あるのは、本棚と机だけなのだ。そして、学校の制服だけがハンガーに掛かっていた。
最初は、数学から、今までの復習と、ひかるちゃんが取り出してきた問題集を解いていて
「すぐりちゃん さすがやねー 全部 正解ヤン すらすらとー」
「まだ 新学期始まったとこやシー こんなん序の口やんかー でも こんな問題集なんて やったん初めてやー 持ってへんからな」
「そんでも 今までのこと、ちゃんとやってへんかったら できひんでー」
「私も 中学になってからやー ちゃんとやり出したんは・・・」
「みたいね 小学校の時は そんなに目立てへんやったやんかー 中学になって急に・・・」
「ひかるちゃん 小学校の時 私のこと知ってたん? 私なんて カスみたいなんやったちゃう?」
「知ってたよー 同じクラスになったこと無かったけど・・・男の子達にちょっかい出されて、いじめられてたこともあったやんかー でも、泣き出すことも無くて・・・強い子なんやなーって思ってた。私やったら、絶対に泣いてるわー」
「そんなことないねんでー いつも 裏に行って泣いとったんやー それに、ウチは貧乏やから 文房具とか揃って無くて、女の子なんかから恵んでもらっとった 向こうは親切なんやろけど・・・有難うってゆうとったけど、私は、それが悔しかったんやー」
「あぁー ごめんなさい 私 そんなんやったと知らんかった」
「ええねん 私 そんなん 昔のことやと思ってるからー それに、こんなこと話したん ひかるが初めてやー 友達やしなー」
「すぐり 私等 良い お友達同士になれそうやねー 周りは あの子は変わってるってゆうけど 普通やんなぁー 芯が強いだけやんなぁー まぁ 不思議ちゃんやけどー それとな お兄ちゃんが小学校の時 ゆうとったことあったわー あの子はいつもいじめられてブスとか言われてるけど、俺は可愛いと思うんやけどー おかしいんやろかーって」
「えっ えー 可愛いって? お兄ちゃんがねぇー ふふっ」 でも、そのお兄ちゃんって人 私には、顔が浮かばない。
その後、ホットプレートを用意してくれて、焼きそばを作っていて、ひかるちゃんは、その上に卵を割って混ぜていた。私 焼きそばに卵を落とすなんてこと知らなかったのだ。ふたりで焼きそばを食べながら
「なぁ お兄ちゃんが自転車置いて行ったってゆうてたやんかー どっか 行ったん?」
「うん 今年から 敦賀の高校 寮に入ってんねん 野球部」
「えっ 野球部?」
「そーやでー すぐりんチの近くの篠田貫次 中学で一緒やねん お兄ちゃん 一緒に行こうって誘ったんやけどー 俺は素質無いからってー」
「そーなんやー 素質なぁ・・・根性も無い かもね」
「ふふっ それ ゆうかー ボロカスやなー お兄ちゃんな こっちの高校と迷ってたんよ でもな この辺りは昔 秀吉が治めとったやんかー あいつはぶ男やから、ぶさい娘しか集められんかったんや 最後に、よーやく苦労して茶々を手に入れたくらいでな その点 敦賀は昔からロシアと交易があったから、可愛い女の人の流れがあるんやって だから、敦賀にするって決めたんやってー ええ加減な奴やろぅ?」
「ふ~ん もしかして チャラ男 なん?」
「そんなことないと思うけどー 妹としてはな! それだけとちゃうと思うけどー あそこの方がプロ野球に入った人が多いヤン それもある」
「なぁ 私 甲子園にでも行くようになったら、応援せんならんなぁー 可愛いってゆうてくれたんやからー」
「すぐりやって もしかしたら チャラ女ちゃうんかー?」 と、二人で笑い転げていた。私 友達とこんなに笑いあったのは 初めてだった。
「なぁ ひかるは好きな人 おるん?」
「学校にはおらへん 古川雄太 押しとるけどなー」
「誰? それ」
「ミュージカルの人やー 知らんやろなー」
「へ ミュージカル なんで そんなん 知ってるんやー・・・」でも、私には 三倉耀が居る。
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