| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

だからってなんだよー 私は負けない

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5章
  5-1

 5月の連休の前半は毎日と言っていい程、配送を行っていて忙しかったのだ。高校生の3人とおばあちゃんにも毎日手伝ってもらっていた。篠田社長のとこの生椎茸と白きくらげも大幅に注文が増えていたのだ。だから、お母さんはそっちを手伝いに行っていた。

 後半になってようやく休めるようになって、私はイワナ獲りに無理やり先生を誘っていて、待ち合わせて、いつもの仕掛けのところに向かった。

「先生 何か 今日は眼許が厳しいね 何で?」

「うー そうかぁー まぁ 誰かに見られたら嫌だなーって」

「ふ~ん そんなの気にしてるんだ じゃぁ 誘った時 断ればいいのにぃー」

「いや まぁ 前にイワナを捕まえた時とか食べた時の感動が忘れられなくってー」

「・・・君は・・・どうして そんな時 すぐりに会いたかったからという言葉が言えないんだね」

「・・・すぐり先生 今日は天気も好いし 水も透き通っていて、いっぱい捕まえられるだろうか」

「そーやって 誤魔化すんだからぁー まぁ 魚のほうも、餌を求めて活発に動くからね」

 仕掛けを少し大きめに作り直して、二人で入ってくるのを待って、同時に捕まえ始めた。先生も、もう呼吸を掴んだのか、たちまち2匹ずつ捕まえていて、先生も自慢げに喜んでいた。少し岩場で休憩することにして、鳥の鳴き声を聞いていた。

「すごく やすらぐね 川の流れる音と鳥の声 他に何にも聞こえない」と、私は眼を閉じて先生に頭を預けるようにしていった。彼も、しばらくそのままでいてくれたのだ。

「こーやっていると 先生の鼓動とか息遣いが伝わって来る 私 今 幸せ! 先生と初めてここで会った時 もう 1年以上前になるんだね 去年の連休は初めて、先生と山に葉っぱを取りに行ったの あっという間だったね 先生に色々と教えてもらって ここまて来たわ」

「そーだね あっという間だった だけど すぐりはその間によく頑張ったよ えらいと思う」

「わぁー 褒めてくれてるんだぁー じゃぁ ご褒美」と、私は顔を上げて眼を閉じて待った。しばらくして、彼の手が私の頬に掛かって来て・・・おでこにチュッっと

「なんやのー こども騙しやんかぁー もっとぉー 待ってたのにぃー」

「そーいうわけに いかんやろー」

「先生 いつも・・・私のことを相手にせーへんやんかー 私は、真剣なのにー」

「すぐり 先生と生徒なんやー それに、君は まだ 13だろう」

「じゃぁさー 私が卒業してたらええん? 18やったらええん?」

「まぁ その時に お互いの気持ちが そーやったらな」

「先生 今の気持ちは?」

「うん すぐりが 今 仮に18だったら 魅かれていると思う」

「良し! まぁ しゃーないな! 次の次のオリンピックまでかー その間 先生に余計な虫がつかんよーに 見張っとくからー」

「おい おい それは 男のセリフやろー」

「ふふっ じゃぁ あと 1匹ずつ捕まえて もどって焼こぉーかー」

 山を下りてくると、ガード下の道で、呼び止められて

「あんりゃー 先生でねーかー どないしたん? こんところでー」

「あっ はぁ ジョギングしてたら 生徒に出会って、山ん中にイワナを獲りに・・・」

「はぁ そーかい すぐりちゃんは、イワナ獲りの名人じゃからのー ほんで 今 もんできんしゃったのかい」

「そーだよ おばちゃん ほら 6匹も 今から、焼いて 先生にごっそうするの」

「そーかい それはいいのぉー 先生も都会の人やから めずらしかろってーぇー」

 と、別れたのだけと゛

「いゃぁー まいったなー クラスの生徒のお母さんだよー」

「あぁー 豊ンチのお母さん 出会っても どってこと無かったヤン 先生 気にし過ぎやってぇー」

「そーなんかなー」

 そして、家に戻って、前の家の竈に火を起こして焼き始めた。

「前と違うね 流しが増えている」

「うん 私等 あっちの庄爺が住んでいたとこに越したの ここは、作業場 もう直ぐ サッシにして 床もコンクリートにして、入り口も二重に設けるの 虫が入ってこないよーにね それと、洗浄の部屋と荷造りの部屋を仕切るの」

「へぇー 本格的なんだ」

「そーだよ 虫とか変なものが混じっていると、食べ物に載せるんだから 大騒ぎになるでしょ 気つかわなきゃー」

「すぐり すごいなぁー 葉っぱ届けるだけじゃぁないんだ」

「うん オーナーに言われているの そのお店の信用にもかかわるんだから 出来るだけのことはしてちょーだいって」

「はぁ なるほどー」

「2月からね 庄爺のこともあって 取引口座を信用組合にしたの そこから融資もしてもらえるから 設備投資の資金にね それに、篠田社長さんの口利きで工務店のほうも格安でやってくれることになったのよ そこの器械も篠田社長さんが貸してくれてるの 真空包装機 だから 今 包装するのも2台で速くなったんだよ」

「へぇー すぐりって やり手だのぉー お母さんの昔の話みたいだ ぐいぐい前に進む」

「うん 私 先生のお母さん 崇拝してるからー お義母さんって呼ばさしてもらえるように頑張るんだぁー」

「うっ・・・そーかぁー」

「でもね 稼いでも どんどん 設備投資するから ぜんぜん お金 残らへんねー  生活は前みたいな貧乏な時とちごーて 楽になったけどなー」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧