蒼と紅の雷霆
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X編:トークルームⅠ
前書き
モルフォとロロはライバル…でも一時は国民の拠り所のバーチャルアイドル相手だとアキュラに手伝ってもらっても五分。
《3人のパートナー》
『ふふん、どう?パンテーラ、モルフォ。僕のモード・アウェイクニングの方が良いと思わない?』
「ふふふ、ロボットなのに寝言を言えるのですか?私のこの旧・変身現象の愛らしい姿の方が良いに決まっています」
『そうそう、布面積の少なさで人気を得ようとしてる魂胆が丸分かりよ?はしたないわねー』
「「『………ふふふふ』」」
アキュラとソウはロロとパンテーラとモルフォの不穏な雰囲気を漂わせながらの会話に我関せずとばかりにそれぞれの武器のメンテナンスをしていた。
『僕がその気になればアキュラ君を復活させられるし、ジャケットの性能だってドバーンと上がるんだから!』
『でもそれって復活させないと使えないんでしょ?オーバードライブ状態でないとアキュラの装備の強化も出来ないとか随分と限定的じゃない?私は歌えばお父さんの戦闘に大きく貢献出来るし、一応歌の支援はセプティマホルダーなら受けられるわよ』
「私も対象が固定されていませんし、私のサポートの方があなたよりも遥かに優秀です。私は鏡の足場を用意することで落下の危険性をアキュラよりも大きく減らせます。私とモルフォの合体SPスキル…“インフィニティリヴァイヴァー”で万が一の時はソウを強化復活させられます。それに…」
『それに…って何さ?』
「私は生身ですから…愛するソウに触れることが出来るのです。バーチャルであるために落下したら基本的に復活以外は何も出来ないポンコツなあなたとは決定的に違うのです」
『私もあなたみたいにメンテナンスは不要だし、必要なら姿は消せるから私生活の邪魔にはならないけど、目立つまん丸ボディは不便よねぇ?』
モルフォがクスクスと笑い、パンテーラは尻尾の鋭利な先端でロロをつつくとバーチャルなために透かされる。
『う、うわあああっ!それ凄く気にしてるのにーっ!』
「ふふ、愛の勝利です」
『何度も言うけど機械って不便よねー』
「「………」」
この時ばかりは不仲の2人の気持ちは1つとなる。
“騒がしい”…と、しかしこんな騒がしいのも悪くはないと。
(ソウとアキュラの心に温かなものが満ちた。)
《現在に到るまで》
「ねえ、お兄さんとテーラちゃんはずっとスメラギと戦ってきたの?」
「…?まあな、スメラギの部隊は様々な場所にいるからな。奴らの本拠地に潜入するには少しでも戦力を低下させなければならないんでな」
自分達がどれだけ優れていようが所詮は数人。
圧倒的な数の前では思った以上の前進は出来ずに現在に到るのだ。
「…お兄さんが行った場所にもマイナーズっていたの?」
「一応はな、だが…基本的に逃げられる。俺達もセプティマホルダーで俺が身に付けている装備はスメラギから奪った物だからな」
「あなた達みたいに私達を受け入れてくれるマイナーズは貴重なのです…まあ、これは昔とあまり変わりませんが」
「昔?」
「遥か昔…あなたが生まれるよりも前はセプティマホルダーがマイナーズの立ち位置にいたのです。数で大きく劣るセプティマホルダーはマイナーズからの迫害を受けて今のあなた達のような生活をしている者が多かったのです。」
実際にかつての外国のセプティマホルダーはマイナーズに迫害されている者が多く、かつてのこの国は黒い部分はあれど外国と比べて遥かにセプティマホルダーとマイナーズが共存出来ていた国だ。
今のセプティマホルダー優位の時代を生きていて、今でも数を減らしているマイナーズ達では想像もつかないだろうが。
「そ、そうなの?セプティマホルダーがそうだったなんて今じゃ信じられな…あれ?テーラちゃんとお兄さんって今いくつなの?」
「…秘密です」
意味深な笑みを浮かべるパンテーラにコハクは不思議そうに見つめる。
「とにかくだ、拠点を使わせてくれることには感謝している…だから出来る限りのことはしてやろう」
「あ、うん。ありがとうお兄さん」
「………」
笑顔を浮かべながら礼を言うコハクにソウは遥か昔の記憶が刺激された。
(ソウの心に温かなものが満ちた。)
《コハクの悩み》
「むうう…」
「どうした?締まりのない顔が更におかしくなっているぞ」
「あっ!お兄さん酷いっ!!って、悩んでる理由はお兄さんとテーラちゃんだよ!」
「「?」」
「アキュラ君もそうだけどお兄さんもテーラちゃんも食料に手をつけないんだもん。もしかして遠慮してるの?」
「…遠慮はしていない。食事が不要なだけだ…」
「え?不要?」
「俺達の肉体は既に滅んでいてセプティマで擬似的に人の形を取っている…俺とテーラはお前達が生まれる前世紀の人間だ。」
「一応、食物摂取は出来ますけど必要と言うわけではありません」
「そ…そんな…」
驚きのあまりに震えているコハクにソウとパンテーラは目を合わせる。
やはりここも無理かと溜め息を吐いた時。
「つ、つまりお兄さんとテーラちゃんは100歳越えのお爺ちゃんお婆ちゃんだったの!?」
「「は?」」
驚きのポイントがまさかの実年齢だったことに逆に驚かされる。
「それじゃあ次からはお爺ちゃん、お婆ちゃんって呼んだ方が良いかな?」
「それは止めて下さい」
実年齢はともかく中身は乙女なパンテーラ。
年寄り扱いはお断りである。
「でもご飯は食べられないわけじゃないんだよね?それじゃあ次からは一緒に食べようよ!みんなで食べる方が美味しいし!」
「…貴重な食料だろう?良いのか?」
「勿論!あ、でもあまり贅沢は出来ないけど…」
「…いや、構わない…感謝する」
「とにかく今まで通りに接して下さい…良いですね?」
「はーい!テーラお婆ちゃんっ!!」
「コハク、少し向こうでお話ししませんか?」
「きゃああっ!冗談だってばーっ!!」
追いかけっこを開始した2人にソウは珍しく口元に笑みを浮かべながらこの場を去った。
(ソウの心に温かなものが満ちた。)
《プラズマシューターの前身》
「ねえ、お兄さん。お兄さんの銃って凄ーく便利だよね!弾や刃要らずで!」
厳密にはプラズマシューターの銃身の下部にあるマウントラッチに雷撃刃を発現させる柄をマウントさせているので別々に使うことも一応は可能だ。
「この銃は元々避雷針(ダート)を発射する物だったんだが、避雷針の入手方法が出来なくなってからは単純にセプティマをダイレクトに放つ銃になっている…この銃の前身は銃口から雷撃の刃を出すことも出来たんだが、その際威力が低下することが分かったから2つに分けている…この銃剣も使ってから長くなる…補修を繰り返しながら使っている」
その際にマガジンが必要なくなったので銃の軽量化に繋がるが、大したことではない。
「避雷針?」
「弾丸となる針に俺の髪を仕込んだ物だ。俺の体の一部だからこそ雷撃が効率良く流れ込む…と言っても今では手に入らないが…」
「じゃあそれって昔は髪の毛針銃なんだね」
「…まあ、強ち間違いではないか…」
コハクと言い、“彼女”と言い何故微妙な言い方をするのか…。
(ソウの心に温かなものが満ちた。)
《ぬいぐるみの行方》
マリアと言う少女が何かを探すようにウロウロしている。
「何をしている?」
「っ!?」
ソウが尋ねるとマリアは慌てて物陰に隠れた。
「何故隠れる?」
「だって、GSはセプティマホルダーです…」
ここにいた仲間を殺した連中と同じセプティマホルダー。
マリアからすれば警戒する理由としては充分過ぎた。
「お前に危害を加えて俺に何のメリットがある?…何かを探しているようだが……何時も抱いてるぬいぐるみはどうした?…まさか無くしたのか?」
「う…っ」
どうやら図星らしい。
「お前がぬいぐるみを持っていた時に進んでいたルートを教えろ。」
「え?」
「ウロチョロされると鬱陶しくて敵わん…早く来い」
睨まれたマリアは慌てて一緒にぬいぐるみを探してもらった。
ぬいぐるみは昼寝をしていたキョウタの枕になっており、マリアの怒声が響き渡った。
この時から少しだけマリアの警戒心が和らいだ気がする。
(ソウの心に温かなものが満ちた。)
《“セプティマ”と“第七波動”》
「あの、GS…」
「何だ?」
「あら?」
『珍しいわね、マリアがお父さんに話し掛けるなんて』
マリアがセプティマホルダーのソウに話しかけたことで全員の視線がマリアに集中する。
「前から気になっていたのですが、セプティマホルダーってどういう意味なのです?」
「セプティマの力を持つ者だが?俺とテーラのようにな。ついでにお前やアキュラ達のようにセプティマを持たない者をマイナーズと呼ぶ…一般常識だぞ?」
「ソウ、きっとマリアはセプティマホルダーの意味を知りたいのでしょう」
「はい」
パンテーラの言葉に同意するように頷くマリア。
「ふむ…セプティマとはある国の言葉で“7”を意味する。昔はセプティマは第七波動(セブンス)と呼ばれ、セプティマホルダーの体から、従来の第一~第六階梯に留まらない“第七”階梯に属する生命の“波動”が検出されたことが第七波動の名前の由来となっている。マイナーズや動物が有する波動が第一~第三階梯、霊能力者・超能力者の類が持つ波動が第四階梯、その中でも力の強い者の波動が第五階梯、様々な奇跡を起こしてきた歴史上で“聖人”や“霊獣”と呼ばれる存在の波動が第六階梯となる……難しい話は省くが、第七波動能力者と呼ばれていたセプティマホルダーは今のマイナーズのような立ち位置でな…恐らくセプティマへと名前を改められたのも自分達がかつてのマイナーズのような立ち位置になれたことを示す意味も兼ねているんだろう…まあ、あくまで推測だが」
「うう、良く分かんないです…」
「とにかく昔は第七波動って呼ばれてて今はセプティマってことになったってことだけ分かれば良いんだよね?」
「そうだな、こんなことは知っていても知らなくても何も変わらん」
『今の時代、セプティマを第七波動って呼んでいたことを知っている人なんてごく僅かでしょうしね』
マリアとコハクの言葉にソウはそう言うと話を打ち切った。
モルフォも今時、過去のセプティマの名称が第七波動(セブンス)と呼ばれていたことを知っている人間はほとんどこの世にいないことを言うとジンがソウに振り返る。
「でも、ガンセイヴァーさん。昔のことにやたら詳しいですね」
「一般常識だ」
「物知りで鬼つえーんだな。GSの兄貴って」
(ソウの心に温かなものが満ちた。)
《EPエネルギー》
「そう言えば、GSの兄貴がしてるポーズって何なんだ?」
ソウが訓練をしているとキョウタが話し掛けてきた。
「ポーズ…チャージのことか…あれは精神集中のための自己暗示のような物だ。EPエネルギーをチャージするためにな」
「いーぴーエネルギー?」
首を傾げるキョウタに根が真面目なソウは出来る限り理解出来るように説明する。
「EPエネルギーとは、ELECTRIC PSYCHO エネルギーの略だ。俺のセプティマ因子が生み出す電気エネルギー。俺のセプティマはこのエネルギーに依存しているから、セプティマの行使をするにはこのチャージが必要不可欠だ」
「へー、ただのカッケェポーズじゃなかったんだな?」
「何の意味もなく戦場であんなポーズを取るわけないだろう。」
ポーズにちゃんとした意味があったことにキョウタが感心すると、ソウは呆れたように見つめる。
《因縁の相手》
「「………」」
黙りこんで互いに睨み合う両者。
それをパンテーラとモルフォとロロが見つめる。
『凄い睨み合いだね』
「仕方ありません。ソウとアキュラは水と油のような関係ですから…まあ、昔と比べれば成長したようですが」
『昔のアキュラを考えれば格段の進歩じゃない。あの時はいちいち突っ掛かってくるから鬱陶しいったらなかったわ』
『流石に昔みたいにはねえ…』
「少し黙っていろ…ソウ、貴様はバタフライエフェクトの所在を知っているのか?」
「さあな、それの所在など俺にはどうでもいいことだ。俺の目的は…“あの男”を殺すことだ…」
「…あの男とは何だ?」
「俺から全てを奪った屑だ。弟と妹を奪ったあいつだけは必ず殺す」
「………妹…」
「何だ?」
「何でもない、俺は貴様の復讐を邪魔をするつもりはないが、貴様も俺の目的を邪魔するな。」
「おい、バタフライエフェクトについては俺はある程度でしか知らないが、その装置にそこまで執着する理由があるのか?」
昔のアキュラならばバタフライエフェクトよりもセプティマホルダーの抹殺を優先していたはずだ。
「……あれは…破壊しなければならない…それがあいつを救う唯一の方法だからだ」
それだけ言うとアキュラはロロを伴ってこの場を去った。
「バタフライエフェクト…ただのセプティマホルダーを管理・強化するマシンではないようだな」
「…(何かを忘れているような気がします…アキュラが何故バタフライエフェクトに執着しているのか…そして以前、似たようなことがあったような……そう、セプティマホルダーを洗脳するプロジェクト…歌姫プロジェクトの……まさか…)」
パンテーラは嫌な予感を感じながらも推測の域を出ないために口を閉ざした。
『バタフライエフェクト…何か不思議な感じがするのよねぇ…』
(ソウはパンテーラとモルフォとの心の繋がりを感じた。)
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