過ぎ去った台風
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第二章
誰もが喜んだ、難が終わったと。それは宮内庁の官吏達も同じで。
それでだ、ある者が帝に言った。
「陛下、難は過ぎ去りました」
「いや、まだだ」
だが帝はこう言われた。
「難は終わっていない。これからだ」
「あの、台風は」
その者は帝のお言葉に驚愕し言った。
「東京を過ぎましたが」
「だが北上している」
帝はその台風のことを言われた。
「そしてだ」
「そのうえで、ですか」
「東北や北海道に向かう」
そうした地域にというのだ。
「そこにいる民達の苦労はこれからだ」
「だからですじゃ」
「皆の難は終わっておらぬ、むしろだ」
「東北や北海道はですか」
「これからだ、台風が日本を完全に通り過ぎるまで」
まさにそれまでというのだ。
「難は終わっておらぬのだ」
「そうなのですね」
「東北や北海道は備えねばならぬ」
台風にとだ、こう言われてだった。
帝は今度はその地の国民達のことを心から思った、この話は残り。
令和になってもだ、心ある国民達は思うのだった。
「東京だけじゃなく」
「ご自身がおられた」
「これから行く東北や北海道のこともお考えとは」
「そこにいる国民のことを」
「何という素晴らしい方だ」
「素晴らしい君主だ」
「国家元首として理想だ」
こう言うのだった。
「我々はよい帝を戴いていたのだな」
「常に国民全てのことを考えておられたか」
「日本全体のことを」
「まことに素晴らしい君主であられた」
「こうでなければならないな」
「君主であられるならな」
こう話してだった。
この話を語り継ぎ書き残すことにした、令和の後も。昭和帝が一体どういった方であられたかということを。
過ぎ去った台風 完
2024・10・15
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