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ミステイク

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第一章

                ミステイク
 しまった、その瞬間思った。
 料理をしていてだ、向田静香は苦い顔になった。
「参ったわ」
「どうしたんだ?」
 すぐに同棲している山崎信長がリビングで聞いてきた、見れば静香は一五一位の背で黒髪をセミロングにしていて小さな顔で目が細く唇が大きい。胸が結構ある。信長は一七一位の背で優しい顔立ちでやや色白で黒髪を真ん中で分けている。それぞれの会社の取り引きで知り合って交際する様になり今は付き合っているのだ。
「一体」
「肉じゃが作っていたけれど」 
 その苦い顔で言うのだった。
「みりん買い忘れていたのよ」
「みりんがないと」
「そう、肉じゃがはね」
 この料理はというのだ。
「無理だから」
「そうだよな」
 信長もそれはと頷いた。
「肉じゃがっていうとお醤油と」
「みりんでしょ」
「お砂糖とな」
「味付けはね」
「お醤油とお砂糖はあるよな」
「ええ」 
 静香はその通りだと答えた、二人共服は動きやすいシャツとスラックスの部屋着である。静香はそこに赤いエプロンを着ている。
「そうよ」
「みりんだけないか」
「買いに行こうかしら」
 静香は考える顔になって言った。
「今から」
「味付けもうしたのか?」
 信長は静かに問うた。
「それで」
「まだよ」
 静香は素直に答えた。
「それはね」
「まだなんだな」
「ええ、食材切ってお鍋に入れたところよ」
「食材はやっぱり牛肉に」
「じゃがいもにね」
 この食材にというのだ。
「人参、玉葱よ」
「そうだよな」
「糸蒟蒻も入れるつもりだけれど」
「いや、それなら」
 信長は食材を聴き終えて言った。
「糸蒟蒻は入れないで」
「それでなの」
「お醤油もお砂糖も入れてないなら」
 それならというのだった。
「他の味付けでいけばいいな」
「他の?」
「キッチンにカレーかハヤシライスのルーあるよな」
「カレーは三日前に食べたでしょ」 
 静香はすぐに言った。
「チキンカレーね」
「ああ、僕が作った」
 信長も作る時があるのだ、家事は二人でそれぞれを順番に行っているのだ。
「美味かった?」
「よかったわ、カレールーは今もあるけれど」
「三日前に食べたなら」
「それならね」
「止めておくか」
「そうなるとハヤシライスになるかしら」
 カレーでなければというのだ。 
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