ファントムポリス
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第一章
ファントムポリス
街の交番である、交番には警察官がいるものだがその交番は少し違っていた。いつもにこにことしている丸顔の優しい顔立ちの警官がいてだ。
街の人達に笑顔で挨拶をして何かあると交番から出て街の人達の為に動いた。それで誰もがその景観を慕っていたが。
その所轄の警察署の署長になった四日市勝キャリア組で眼鏡をかけた面長で黒髪を丁寧にセットした彼はその話を聞いて首を傾げさせた。
「あの交番にそんな人がいましたか?」
「いえ、今はいません」
この署に長年務めている本多勝彦が答えた。大柄で長方形の岩の様な顔である。筋骨隆々とした身体が実に警官らしい。
「私もあの交番のことは知っていますが」
「それでもですか」
「はい」
そうだというのだ。
「そうした顔立ちの警官はいません」
「ですが聞きます」
四日市は本多に署長の席から言った。
「とても優しくて親切な警官がいると」
「あの交番にですね」
「そうですが」
「しかしまことにです」
本多はそれでもと話した。
「あの交番には」
「そうなのですね」
「心当たりがありません」
「この署に在籍している人の名簿を見ましても」
それでもというのだった。
「やはりです」
「いないですね」
「そうした外見の警官はあの交番とは関係がありません」
そうだというのだ。
「これが」
「左様ですね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「私も不思議に思っています」
「そのお話を聞くと私もです」
本多は四日市の前に立ち真顔で述べた。
「実にです」
「不思議ですね」
「心当たりがないので」
「ではです」
四日市は本多に真顔で言った。
「実際にあの交番に行って」
「そうしてですか」
「はい、そのうえで」
こう言うのだった。
「この目で確かめますか」
「百聞は一見に如かずなので」
そう言われているからだというのだ。
「ここはです」
「そうされますか」
「そうしましょう」
こう言うのだった、そうしてだった。
四日市は実際にその交番に行ってみることにした、話をしたことから本多も一緒であった。それで二人で交番住宅地の中にあるそこに行ってみると。
実際にその警官が立っていた、にこにことして優しい感じであり言われているその姿そのままであった。
それでだ、四日市はその警官に対して真顔で問うた。
「貴方は誰ですか?」
「署長、こんにちは」
その警官はまずは微笑んで敬礼して応えた。
「ようこそ」
「はい、ですが」
四日市は礼儀正しく返礼してからあらためて問うた。
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