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ファンシーハネムーン

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第三章

「日本にいる気がしないわ」
「物凄く忠実に再現しているね」
「オランダの街を。それでいて」
 ミカエラはハウステンボスの中を見回しつつ話した、海の傍にあり潮風の匂いもする。運河もありそこを船が進んでいる。
「他の国もあって」
「イタリアもあるね」
「スイスもスペインも。アメリカもあって」
「中国だってね」
「それでいて日本の中にあって」
 それでというのだ。
「はっきりとね」
「日本も感じるね」
「ええ、神秘的でさえあるわ」
 ハウステンボスはというのだ。
「長崎の街もだったけれど」
「こちらもだね」
「こんな場所があるなんて」
「神秘的ですらあるね」
「この世にない様な。可愛くもあるわ」
「長崎の街もね」
「ファンシー。そう言うべきね」
 そうしたというのだ。
「可愛さがあるわ。桜のお花も満開で」
「長崎とこのハウステンボスには」
「来てよかったわ」
 風が来た、その風がミカエラの髪の毛を揺らがせた。フランコは妻のその姿も見てだった。満面の笑顔で彼女に応えた。
「僕もそう思うよ。そしてファンシーをね」
「見たのね」
「今ね。ここにはイルミネーションもあるから」
「夜には」
「それも見てね」
「楽しむのね」
「そうしよう」
 笑顔での言葉だった。
「夜もね。夕食を食べてワインを飲んで」
「そのうえで」
「お風呂も入ってね」
「日本はお風呂よね」
「そちらにも入ってね」
「そうしましょう」 
 ミカエラも笑顔で応えた。そして二人で桜とチューリップを同時に見ると尚更言った。
「日本のお花の桜とオランダのお花のチューリップが同じ場所にあるなんて」
「これはないね」
「これが一番よ」
 まさにというのだ。
「隠避的でこの世にない」
「ファンシーだね」
「最高の光景よ。もうずっといたい位よ」
「心から思うよ」 
 二人で話した、そしてイルミネーションでもそう思ってだった。
 また長崎に来ても思った、桜が咲き誇る長崎の街を観て。二人にとってそれは最高の新婚旅行になり一生の思い出となった。
 夫婦で旅行を楽しみ欧州の各地に中国も行きアメリカもそうした。だが夫婦はその中でお金に余裕があれば春に長崎に行く様になった。そして心から楽しんだ。そこにあるものを満喫したのだった。


ファンシーハネムーン   完


                   2025・1・12 
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