好色一代男は死なず
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第五章
「これがな」
「そうなんか」
「ああ、どうもな」
「いや、あの噂は本当ですか」
若い男も言った。
「まさかと思いましたが」
「内緒やぞ」
世之介は釘を刺した。
「ええな」
「はい、流石に言えへんですね」
「大坂はお侍さん少ないけどな」
「滅多に見かけへんですね」
「そやけど人の噂は広まってな」
そうしてというのだ。
「奉行所の耳に入って噂の元を突き止められたらや」
「まずいですね」
「そやからこの話はな」
「言いません」
「噂でも自分が言った元やないと何もない」
奉行所に捕まることもないというのだ。
「そやからな」
「このお話は言わへんことですね」
「羽柴の若殿様のことはな」
「右大臣様のことも息子様のことも」
「決してな」
「ほんま言わんことや」
助平も言った。
「この話はな」
「そや、それで遊びのことやが」
世之介は笑って話をした。
「ほんま極楽や、毎日別嬪さんを何人もや」
「相手にしてるか」
「色々とな、それで今はな」
「大坂のおなごと遊ぶな」
「久し振りにな」
こう言ってだった。
世之介は実際に遊郭で遊んだ、それから屋敷に帰ると家族にまた急にと驚かれた、その驚いた様子も楽しんでだった。
彼は暫く大阪で遊んだ、そのうえで助平と若い男に話した。
「ほなまたな」
「あっちに戻ってか」
「遊びますか」
「そうするわ、それで兄ちゃん」
若い男に話した。
「よかったらどないや」
「島にですか」
「来てみるか」
誘いをかけるのだった。
「ええとこやぞ」
「おなごにおのこがよおさんおって」
「別嬪さんがな」
「あらゆる国、異朝の」
「あらゆる時代のな」
「そちらにですか」
「どないや」
来るかどうかというのだ。
「よかったら船に乗せるで」
「ほな」
それならとだ、若い男も助平心を出して応えた。
「頼みます」
「ほなな」
「はい、存分に遊んで」
「一緒に楽しもうな」
「そうさせてもらいます」
「そうか、二人共楽しんでくるんやで」
助平はそれならと笑顔で応えた。
「わしはここで馴染みの太夫さんがおるさかい」
「その人と遊ぶか」
「そうするわ」
「そうか、ほなな」
「ああ、こっちで遊ぶわ」
「わかったわ、ほなお互い遊ぼうな」
「これからもな」
笑顔で別れてだった。
世之介は若い男、後で名を聞くと艶兵衛という彼を連れて島に戻った、そして死ぬまで遊んだという。その後を継いだのがこの艶兵衛であったが彼の話はまた別の話である。
好色一代男は死なず 完
2025・3・29
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