好色一代男は死なず
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第三章
「朝から晩までどんどんや」
「楽しみ尽くしてか」
「そのうえでか」
「この島で暮らすか」
「ああ、思う存分な」
今度は大蒜を食った、そして他の精がつくものも喰らってだった。
世之介はその娼館に言った、それは古稀になっても続き。
ふと思い立って大坂に戻るとだ、その足で遊郭に入った。そして助平と若い男に島でのことをこと細かに話した。
「この通りや」
「遊び倒してるか」
「ほんま息子がずっと元気でや」
古稀になっても生き生きとした顔で話した。
「しゃあないわ」
「そうなんやな」
「もう若い頃のままでな」
その様にというのだ。
「楽しくやってるわ」
「あの、こっちではです」
若い男が世之介に話した。
「世之介さんが遊び過ぎて」
「わしがかいな」
「死んだって言われました」
「それでこっちに帰ったら驚いたもんおったんやな」
「死んだと聞いてたので」
「いやいや、頭に三角の布ないやろ」
額を指差して話した。
「顔も生き生きとしてるな」
「はい」
若い男はまさにと答えた。
「その通りです」
「そや、そしてや」
そうしてというのだ。
「ちゃんと飯も食うてる」
「湯漬けを」
「そうしてるな」
今実際にというのだ。
「それが何よりの証や」
「生きてるっていう」
「そや、それで里帰りしたが」
「最初に家に帰らんでな」
助平は笑って言った。
「港に着いてその足でか」
「こっちに来たわ」
「遊郭にな」
「それや」
まさにというのだ。
「久し振りに大坂のおなごを抱きたくなってや」
「それでか」
「まずこっちに来たんや」
「まずは遊びやな」
「そや」
何といってもというのだ。
「そういうことや」
「変らんな」
助平は思わず笑って言った。
「ほんまな」
「そうやな」
「ああ、わしは思ってわ」
世之介自身に話した。
「自分が遊びで死ぬ筈がないってな」
「他のことで死ぬとやな」
「遊び過ぎで死ぬ位ならな」
それならというのだ。
「とっくにや」
「死んでたな」
「そや」
まさにというのだ。
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