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三日もてばいい

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第二章

「まさにな」
「そうだな」
「だからな」
 それでというのだ。
「俺もロシアがあっという間に勝つと思っている」
「そうだな」
「昨日はじまったが」
「僕は三日と言ったな」
「明後日にはか」
「ウクライナは降伏しているか」
「首都のキーウも攻め落とされてな」 
 そうなってというのだ。
「最後まで一方的にやられてな」
「終わりだな」
「ああ、そうなる」 
 二日後にはとだ、ルブランは言った。ロシアが攻めると勝率が悪くとも今回は違うと思っていた。遅くともあと二日でだ。
 ロシアは勝つと思っていた、しかし。
 一日経ち二日経った、だが。
「もったな」
「ああ、三日な」
 マルセーヌはルブランに話した。
「もったな」
「まさかだ」 
 ルブランは真顔で話した、二人でパリの街で昼食を摂っている。オムレツにサラダ、それにパンを食べている。
「本当にな」
「そうだな」
「三日もつことなんて」
 ルブランは真顔で言った。
「そしてまだ戦っているなんて」
「思わなかったな」
「全くだ、ロシア軍は機先を制することが出来なかった」
「ウクライナが頑張ったのか」
「そうだ、しかし」
 それでもとだ、彼は苦い顔で語った。
「やはりロシア軍は圧倒的だ」
「その数は」
「装備の質も」
 それもというのだ。
「ソ連の様に超大国ではないが」
「やはり強いな」
「世界第二位だ」
 その軍事力はというのだ。
「空軍も圧倒的だ」
「陸軍に加えて」
「しかも黒海の制海権も握っている」 
 ウクライナが面しているこの海のだ。
「クリミアもまた」
「それならだな」
「有利は動かない」 
 ロシアのそれはというのだ。
「そうなるとだ」
「やはりウクライナは負けるか」
「三日もったことは凄いが」 
 それでもとだ、ルブランは言った。
「一ヶ月か」
「それだけか」
「もっても」
「やはりウクライナは負けるか」
「勝てる筈がない」
 絶対にというのだ。
「ロシアは彼等が望むものを手に入れる」
「ウクライナをか」
「その資源に穀物も」
 そうするというのだ、ルブランは今もロシア軍がすぐに圧勝すると見ていた。それは確信ですらあった。
 だがその一ヶ月が経っても。
「まだだな」
「ああ、信じられない」
 ルブランはマルセーヌに社内でまさかという顔で答えた。 
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