三日もてばいい
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第一章
三日もてばいい
ロシアがウクライナに攻め込んだ、その話を聞いた瞬間にジャーナリストのジャック=ルブランは彼の勤務先のハパリにおいて言った。面長で青がかった灰色の目を持ち眉は短い。くすんだ茶色の髪の毛を短くしていて背は一八〇程で痩せている。スーツがよく似合っている。
「まさかだな」
「ああ、ロシアが攻め込むなんてな」
友人のカメラマンのシャルル=マルセーヌが応えた。長方形の顔で目は茶色で彫のある顔をしている。髪の毛は茶色で癖があり顔の下半分は茶色の髭で覆われている。背は一七八位でがっしりした体格だ。
「思わなかったな」
「ああ、しかしだ」
ルブランは苦い顔で言った。
「三日だな」
「ロシアが勝つか」
「圧倒的だ」
マルセーヌに話した。
「戦力差はな」
「ロシアだからな」
「制空権を取られてな」
ロシア軍にというのだ。
「それからはな」
「一方的に攻められてか」
「そしてだ」
そうなりというのだ。
「本当にな」
「三日で終わりだな」
「勝てる筈がない」
ルブランはこうも言った。
「また言うが戦力差は圧倒的だ」
「ロシア有利だな」
「一気に攻められてな」
「終わりだな」
「残念だがな」
「侵略者が勝つとなるな」
「これからあちこちで戦争が起こりかねない」
その危惧もだ、ルブランは出した。
「本当に嫌なことだ」
「第三次世界大戦も有り得るな」
「充分にな」
こう言っていた、ルブランはこの戦争は三日で終わると思っていた。ウクライナの敗北によって。だが。
社内でだ、こんな意見が出ていた。
「ロシア軍は攻めるのは下手だってな」
「言ってる人がいたか」
「そんな意見を聞いた」
マルセーヌはルブランに次の日言った。
「そういえば確かにな」
「ああ、ロシア軍はな」
実際にとだ、ルブランも頷いた。
「ソ連の頃といいな」
「帝政だった頃もな」
「攻めると負けるな」
「あまり勝っていないな」
「フィンランドの時もそうだったな」
「圧倒的な戦力で攻めてな」
スターリンの頃のその戦争の話もした。
「負けたな」
「そうだったな」
「アフガンも負けた」
「あまり攻めるのは得意じゃないな」
「伝統的にな」
「守るのは防衛ライン敷くのが得意で」
ロシア軍の伝統である、二次大戦でもそうであった。
「冬の寒さもある」
「冬将軍な」
「それでナポレオンも負けた」
ルブランは言った。
「冬将軍にな」
「守ると強いがな」
「確かに攻めるのは下手だな」
「確かに戦力差は圧倒的だ」
マルセーヌはルブランが指摘したこの事実を肯定した。
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