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葱は絶対に駄目

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第一章

                葱は絶対に駄目
 今ふわりの家族である国崎家の面々は夕食ですき焼きを食べている、すき焼きには牛肉だけでなく豆腐に糸蒟蒻、麩にしめじ、菊菜にだった。
 葱が入っている、洋介は日本酒を飲んでだった。
 卵をとじた中にしめじを入れて食べてだ、こう言った。
「寒いとやっぱりな」
「お鍋でしょ」
 母の百合子が応えた。
「そうでしょ」
「そうだよな」
「それで今日はまだ冷えるから」
「三月でもな」
「だからね」 
 それでというのだ。
「丁度お肉も安かったし」
「すき焼きにしたんだな」
「そうよ」 
 まさにというのだ。
「そうしたのよ」
「そうなんだな」
「それでね」
 母はさらに話した。
「今日は沢山食べなさい」
「肉もだよな」
「お肉安かったって言ったでしょ」
 母はまたこのことを話した。
「だから沢山あるのよ」
「いいな、それは」
「すき焼きのメインはね」
「やっぱり肉だよな」
「もうお肉がないとよ」
 それこそというのだ。
「何がすき焼きか、でしょ」
「それは何だ」 
 父の文太はその牛肉を食べつつ言った。
「肉のないすき焼きなんてな」
「何でもないわね」
「牛鍋っていうんだぞ」
 すき焼きのまたの名をというのだ。
「だったらな」
「お肉がないとね」
「別に牛肉じゃなくてもいいがな」 
 その肉はというのだ。
「鶏肉でもいいがな」
「とりすきね」
「それはそれで美味いからな」 
 だからだというのだ。
「いいがな」
「豚肉でもね」
「しかしな」
 肉の種類は兎も角というのだ。
「肉が入ってないとな」
「すき焼きじゃないわね」
「それでこの鍋もな」
「沢山買ってきたから」
 すき焼き用の牛肉をというのだ。
「食べてね」
「そうするな」
 文太は今度は糸蒟蒻を食べた、三人共それぞれの器に生卵をとじたものがありそれに具を入れて食べている。
「今日はな」
「酒も飲んでな」
 洋介はまた飲んで応えた。
「そうするな」
「そう、寒いからね」
「温まるな」
「本当に冬は鍋だな」
 文太はあらためて言った。
「それじゃあな」
「沢山食べてね」
「そうするな」
 こう話してだった。
 三人ですき焼きを食べた、酒も飲んだ。その後でだ。
 洋介はふわりにご飯と水をあげる時にだ、こんなことを言った。
「ふわりはすき焼きには興味がないわ」
「ワン」
 そうだという風にだ、ふわりは鳴いて応えた。洋介はその声を聞いてまた言った。
「犬は人間の言葉わかるしな」
「そうだっていう返事だったわね」
「そうだよな」
 今はくつろいでいる母に答えた、食器等の後片づけはもう済んでいる。 
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