知将の学歴
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第一章
知将の学歴
阪神の岡田監督を甲子園球場で見てだ、中学生の藤田孝治は言った。あどけなさが残る顔で目は丸く大きい。日に焼けた顔で黒髪をスポーツ刈りにしている。痩せていて背はまだこれから大きくなるという感じだ。
「岡田監督って采配いいよな」
「頭いいからな」
一緒にいる父の元春が応えた、背は一八〇位あり息子と同じ顔で黒髪を短くしている。仕事は工事現場の監督である。
「それで有名だよ」
「頭いいんだな、あの人」
「学校じゃ喧嘩が物凄く強くて有名でな」
岡田の高校時代のことも話した。
「成績もよかったんだ」
「野球だけじゃなかったんだな」
「ああ、早稲田だぞ」
この学校の名前を出した。
「大学はな」
「早稲田かよ」
「そうだ、大阪に生まれて高校も大阪でな」
「阪神に入ってずっとこっちだよな」
「けれど大学だけは東京でな」
そうであってというのだ。
「早稲田なんだ」
「そうなんだな、だから頭よくてか」
それでとだ、孝治は頷いて言った。
「采配もいいんだな」
「いや、元々頭がいいんだよ」
だが父はこう言った、一塁側スタンドで試合がはじまる前にだ。岡田は今はグラウンドで選手達にあれこれ話している。
「大学出てなくても頭いい人はいいぞ」
「そうなのか?」
「別に早稲田や慶応出ていなくてもな」
「こっちじゃ関関同立か」
「阪大や京大でなくてもな」
そうした大学を出ていなくともというのだ。
「頭いい人はな」
「頭いいんだな」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「阪神じゃ結果出せなかったが野村さん高卒だぞ」
「あの人そうだったんだな」
「ああ、普通の公立だったんだよ」
その出身校はというのだ。
「そうだったんだよ」
「そうだったんだな」
「それにな」
父はさらに話した。
「阪神の監督でも高卒多いぞ」
「そうなのか」
「高卒でも頭いい人いいんだ」
「早稲田とか出ていなくてもか」
「それで監督としても采配や育成がいいんだ」
「その人次第か」
「逆に学籍関係なくな」
深刻な顔になりだ、元春は孝治に話した。
「頭悪い奴はな」
「悪いんだな」
「どんな大学出ていてもな」
「頭悪い監督は悪いか」
「ああ」
そうだというのだ。
「フロントでもな」
「フロントな」
「うちのフロントは昔やたら揉めたがな」
お家騒動は阪神の常であった。
「いい大学出てもな」
「揉めてたんだな」
「下らないことでな」
「揉めたら駄目だよな」
「それで中々強くならなかったんだよ」
揉めた分だけだ、阪神はお家騒動で無駄に力を浪費しチーム全体によからぬ影響を与え続けていたのだ。
「阪神はな」
「そうなんだな」
「高卒でも堀内なんかな」
「あの偉そうな巨人の爺さんか」
「エースは馬鹿では務まらないって言ってな」
「ああなんだな」
「学歴は関係ないんだよ」
頭のよし悪しはというのだ。
「野球もそうで特に政治家なんてな」
「あの人達は特にな」
「雇うの小さな政党の女の党首いるだろ」
父は息子に話した。
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