貧乏だった日々を思い出して
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第一章
貧乏だった日々を思い出して
深津彩香は大学を卒業して就職して職場の同僚と結婚して今も働いている、共働きでしかも夫の信一郎は管理職になってだった。
給料が上がり経済的にも困っていない、それで友人に言うのだった。
「お金があることはね」
「いいことよね」
「ええ、本当にね」
やや面長の優しい感じの顔で言うのだった、赤がかった長い黒髪を後ろで束ねている。一六三位の背で胸は大きいが他はすらりとしている。スラックスのスーツがよく似合っている。今は二人で一緒にファミレスで昼食を食べている。
「いいことよ」
「共働きだから余計によね」
「お金には困っていないわ、セレブって言われなくても」
それでもというのだ。
「暮らせるだけのお金があったらね」
「嬉しいわね」
「色々な保険のお金も払って」
そうしてというのだ。
「カードも作れて貯金もある」
「それならよね」
「もうね」
それこそというのだ。
「充分よ」
「あんた大学の時貧乏だったからね」
「実家は普通のサラリーマンだったけれど」
それでもとだ、彩香は友人に話した。
「学費は自分で出すって言って」
「いたわね」
「大学の寮でね、それでアルバイトして」
そうしてというのだ。
「学費稼いでいて」
「バイト代それでかなり消えてね」
「アパートの家賃とね」
「ボロアパートのね」
文字通りのそうしたアパートのことを思い出しつつ話した。
「それで食べるものはね」
「パンの耳とかよね」
「大根の葉っぱとか」
「凄かったわね」
「もやしとかね」
「安売り半額とか」
「嫌凄かったわ」
友人に笑って話した。
「本当にね」
「そうだったわね」
「その時のことを思えば」
それこそというのだ。
「今はね」
「お金に余裕があって」
「天国よ、ただね」
「ただ?」
「食べられただけね」
貧乏だった学生時代はというのだ。
「よかったわ、何だかんだでいつも三食食べてたし」
「それはよかったわね」
「本当の貧乏になると」
「三食もないわね」
「だからね」
それでというのだ。
「あの頃は大変だったけれど」
「食べられたから」
「まだよかったわ」
「貧乏でも」
「そう、北朝鮮みたいになったら」
「あそこは変な政治の結果だけれどね」
「ああなったらね」
それこそというのだ。
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