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彼女がいないとわかった途端

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第一章

                彼女がいないとわかった途端
 古川聡美は主任の太田歳久背が高くすらりとしていて卵型の優しい顔立ちで黒髪を短くしている彼を見て同期で同じ課にいる友人に話した。
「太田主任ってね」
「どうしたの?」
「いつもお弁当よね」 
 このことを言うのだった。
「お昼は」
「ああ、そうね」
 実際にとだ、友人も答えた。
「言われてみれば」
「そうよね」
「あれね」
 友人は笑って言った。
「本格的なのだし」
「手作りの」
「そうだから」
 それでというのだ。
「間違いなくね」
「彼女さんいるわね」
「結婚していないそうだけれど」
 それでもというのだ。
「あんなお弁当毎日持ってくるなら」
「間違いなくね」
「彼女さんおられるわよ」
「そうなのね、わかったわ」 
 友人の言葉を受けてだった。
 聡美は頷いた、以後太田は彼を見ているだけになったが。
 ふとだ、聡美はその話を聞いて仰天した、そのうえでその話をしていた後輩のOL達に対して詰め寄った。
「それ本当!?」
「は、はい」
「そうですけれど」
「太田主任ご自身でお弁当作っておられるんですよ」
「一人暮らしでお料理が趣味で」
「そうされてるんです」
「そうだったの、お一人だったのね」
 聡美はそのことを知って頷いた。
「物凄く立派なお弁当だったけれど」
「ご自身で作られてるなんて凄いですよね」
「何でも晩ご飯の残り者で、作っておられるそうですが」
「それでもです」
「いつも本格的でいいですよね」
「料理が出来る男の人って立派ですよね」
「そうね、それにね」
 聡美は喉をごくりと鳴らした、そしてだった。
 太田にだ、自分から声をかけた。
「あの、主任」
「何かな」
「今日よかったら」 
 自分から飲みにそれもムードのあるバーに誘った、太田は一杯ならと付き合った。それをはじまりにしてだった。
 太田に自分から迫った、黒髪を長くしていて大きな二重の垂れ目で大きな口と胸を持ち背が高く足も顔の形も整っていてだ。
 太田も彼女を意識しだした、そして。
「まさか主任とお付き合いしてね」
「結婚までね」
 同期の友人に笑顔で話した。
「いくって思わなかったわね」
「だってあんた最初ね」
 友人は出勤の時一緒になった聡美に話した。
「主任さんに興味ない感じだったから」
「だって彼女さんいるかもって言われたから」
「ああ、毎日手の込んだお弁当持ってきていて」
「それでね」
 だからだというのだ。
「いないって思っていたのよ」
「それでアタックしなかったの」
「そうだったのよ、けれどね」
 その実はというのだ。 
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